液中分子ジェットで有機分子のナノオーダー配列固定

分子デバイス創製への新たな手法

2006.09.06


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS材料信頼性センターは、レーザーで水中に分子のマイクロジェットを発生させることで、様々な材料基板表面のナノオーダー領域にペリレンなどの機能性分子をパターン注入し、その分子ジェット流を利用して基板に穴を開けるなど微小機械加工が可能なことも発見した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 材料信頼性センター (センター長 : 小野寺 秀博) 微小材料工学グループの土佐 正弘 グループリーダーと後藤 真宏 主任研究員 (若手国際研究拠点兼任 (拠点長 : 板東 義雄) ) は、同グループのYuriy Pihosh NIMSポスドク研究員、笠原 章 主幹研究員と共に、レーザーを用いて水中に分子のマイクロジェットを発生させることにより、様々な材料基板の表面のナノオーダー領域にペリレン (青色発光蛍光物質) などの機能性分子をパターン注入することに成功するとともに、さらに、その分子ジェット流を利用して基板に穴を開けるなど微小機械加工が可能なことも発見した。
  2. 分子は、そのもの1個が光学・電子・磁気的に優れた機能を有したいわば最小の機能性ナノ材料と考えることができる。それらをナノオーダーで空間・位置制御して配置し、ナノ構造体材料が作製できれば、分子デバイス、超高感度ナノセンサーアレイを始めとする各種ナノデバイス創製など、広範囲への応用の可能性が生じ、デバイスの新機能の発現や、機能の多様化・高性能化を実現するものとして現在精力的に研究が進められつつある。分子を位置選択的にナノ配列可能な有力な方法の1つとして、当機構が研究を推進しているレーザー分子注入法があるが、この手法ではレーザー光を用いていることから注入空間の制御は光の回折限界および分子駆動の最小エネルギーしきい値に制限されること、さらに両フィルム間の空気のギャップを分子流が通過する際に拡散で広がってしまうことなどから、これまでのところ実際には最小注入領域が数μm径程度であった。
  3. 今回、この空気のギャップに水などの液体を中間層として導入することにより、その分子拡散を抑制し、材料基板のナノオーダー領域に有機分子を注入することに成功した。これにより、従来のソフトマテリアルの高分子系基板に加えハードマテリアルであるステンレス鋼、銅などの金属やガラス、セラミックスといったあらゆる種類の材料の基板上に、最小で直径420nmのナノオーダー領域に分子を配置することが可能となった。さらに、これらの微小配置された分子は、レーザー強度を最適化すると基板表面に強く結合することが明らかになった。また、更なるレーザー強度の増大に伴い、この分子ジェットにより基板表面に微小な穴が開けられることが見出された。
  4. 今回の成果は、あらゆる種類の材料表面のナノオーダー領域に機能性分子を配列注入・固定が可能であることから、各種分子デバイスや超高感度ナノセンサーアレイの作製や新規フォトニック結晶の創製など広い範囲への展開が期待される。
  5. 本研究開発の成果は、科学研究費補助金・特定領域研究 (極微構造反応) ならびにNEDO平成18年度産業技術研究助成事業により得られたものであり、国際学術誌「Japanese Journal Applied Physics: Express Letters」に近日掲載の予定である。

「プレス資料中の図2: 銅基板上に植えつけられたクマリン6分子の蛍光顕微鏡イメージ」の画像

プレス資料中の図2: 銅基板上に植えつけられたクマリン6分子の蛍光顕微鏡イメージ



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独立行政法人物質・材料研究機構
材料信頼性センター 微小工学材料グループ
後藤 真宏 (ごとう まさひろ)
TEL: 029-859-2746
FAX: 029-859-2746
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