粉末から単結晶の情報を得る

強磁場を用いた微結晶の三軸配向

2006.03.17


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS強磁場研究センターの木村 恒久 グループリーダーのグループは、首都大学と共同で磁場配向を用いて粉末試料から単結晶X線回折像を得ることに世界で初めて成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 、強磁場研究センター (センター長 : 木戸 義勇) の木村 恒久 グループリーダー (本務 : 首都大学東京教授 (学長 : 西澤 潤一) 都市環境学部 (学部長 : 井上 晴夫) ) のグループは、首都大学と共同で磁場配向を用いて粉末試料から単結晶X線回折像を得ることに世界で初めて成功した。
  2. 大きな単結晶ができない物質のX線構造解析はもっぱら粉末試料を用いて行われるが、粉末中では個々の微結晶の結晶方位がランダムであるため、得られる回折情報が大きく制限される。
    これは蛋白質、有機物、無機物等の物質の場合 (単結晶解析ができる程度の大きさの試料を作製することが非常に困難である場合が多い) や、ナノサイズの結晶を解析する場合に大きな問題となっていた。
    このような問題を解決する方法として、微結晶の方位を全てそろえることができれば粉末試料から単結晶と同等のX線回折像が得られるので、構造解析が飛躍的に容易になると考えられていたが、そのような手法は実現されていなかった。
  3. 今回、強磁場を用いることにより粉末試料中の微結晶の3軸を全て揃える方法を開発した。静磁場下では結晶が一軸配向することは良く知られていたが、一軸のみの配向では他の軸は自由であり、完全な配向とはいえない。本成果は、時間的に変動する特殊な磁場を用いることにより、二軸を配向させることができることを理論的に見出し、実験的にも検証したものである。 二軸が配向することにより他の一軸も自動的に配向するので、結晶の三軸とも配向することが可能となった。
  4. 本成果により、感度では100倍、分解能も向上するため、様々な物質の結晶構造が決定でき、医薬品開発、材料開発、微粒子を用いた複合材料の開発に大きく寄与できると期待される。
  5. 本研究成果は、文部科学省特定領域研究「強磁場新機能の開発」 (領域代表者 : 山口 益弘 横浜国大教授) の一環で得られたものであり、武蔵工業大学で開催される応用物理学会 (3月22日~26日) で3月26日に発表される。またアメリカ化学会の国際学術誌「Langmuir」に受理され、近日中に掲載される。

「プレス試料中の図1: 微結晶の磁場配向」の画像

プレス試料中の図1: 微結晶の磁場配向



お問い合わせ先

研究内容に関すること

独立行政法人物質・材料研究機構
強磁場研究センター 材料・プロセスグループ
グループリーダ
木村 恒久 (きむら つねひさ)

TEL: 029-851-3354 (内線5009)
E-Mail: KIMURA.Tsunehisa=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)
又は、本務先

首都大学東京 都市環境学部
教授
木村 恒久 (きむら つねひさ)

TEL: 0426-77-2845
(3月18日 - 24日は海外出張で不在)
E-Mail: kimura-tsunehisa=c.metro-u.ac.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

報道担当

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