量子コンピュータ素子の性能評価に世界で初めて成功

励起子のデコヒーレンス時間の直接観測

2006.03.17


独立行政法人物質・材料研究機構
独立行政法人科学技術振興機構

NIMSナノマテリアル研究所 ナノ物性グループの黒田 隆 主任研究員、黒田 圭司 特別研究員、迫田 和彰 主席研究員らは、固体量子コンピュータ素子の基本的な性能指数であるデコヒーレンス時間の直接観測に世界で初めて成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 、ナノマテリアル研究所 (所長 : 青野 正和) ナノ物性グループ (ディレクター : 木戸 義勇) の黒田 隆 主任研究員、黒田 圭司 特別研究員、迫田 和彰 主席研究員らは、固体量子コンピュータ素子の基本的な性能指数であるデコヒーレンス時間の直接観測に世界で初めて成功した。
  2. 量子コンピュータは「量子力学的な重ね合わせ」状態をとることから現在のコンピュータに比べて優れた計算速度などを実現することが期待されており、この「量子力学的な重ね合わせ」状態が安定に保たれている時間のことをデコヒーレンス時間と言う。デコヒーレンス時間は、量子ビットにおける最も重要な性能指数であるが、材料や素子によって千差万別であり、また一般に固体のデコヒーレンス時間はごく短いため正確な評価を行える手法が無く、評価法の確立が待ち望まれていた。
  3. 今回、GaAs自己形成型半導体量子ドットにレーザーを照射することにより、励起子がある状態と、無い状態の2つの状態を実現した。この量子ドットが量子コンピュータ素子としての性能を持っていることを検証するため、レーザーを照射した際に発生する単一光子を、機構で独自に開発した位相安定化自己相関計で検知した。その結果、性能評価の基本指数である励起子および励起子の分子状態のデコヒーレンス時間の直接計測に成功した。
  4. 励起子を利用する量子コンピュータ素子については、今後さまざまな材料や素子が検討されることが予想されるが、その際、今回開発した評価法を適用すれば、今まで評価が究めて困難であったデコヒーレンス時間の長い励起子に対しても高精度の評価が可能となり、量子コンピュータの実現に向けての開発が加速されることが期待される。
  5. 本成果は、JST戦略的創造研究推進事業 (さきがけタイプ) の研究テーマ「単一量子ドットの多光子量子操作 (研究者 : 黒田 隆) 」の一環で得られたものであり、米国の学術専門誌「Applied Physics Letters」の最新号 (3月20日) に掲載される。

「左画像 : 図1 量子ドットの原子間力顕微鏡写真。右画像 : 図3 実験配置図。」の画像

左画像 : 図1 量子ドットの原子間力顕微鏡写真。右画像 : 図3 実験配置図。



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