療用生体吸収性マグネシウム合金の開発に着手

安全性が高く吸収速度や強度の選択が可能に

2006.02.07


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMS生体材料研究センター 機能再建材料グループの山本 玲子 主任研究員および同エコマテリアル研究センター 軽量環境材料グループの向井 敏司 主幹研究員らは、生体安全性が高く、体内における分解速度の制御可能な医療用生体吸収性マグネシウム合金の開発に共同で着手した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 生体材料研究センター (センター長 : 田中 順三) 機能再建材料グループの山本 玲子 主任研究員ら、および同エコマテリアル研究センター (センター長 : 原田 幸明) 軽量環境材料グループの向井 敏司 主幹研究員らは、共同で新しい医療用材料として生体安全性が高く、体内における分解速度の制御可能な医療用生体吸収性マグネシウム合金の開発に着手した。
  2. 金属材料は強度・靭性・剛性などに優れているため、整形外科領域では骨折固定治具や人工関節などに、循環器・消化器系疾患では血管や食道などの狭窄部位を拡張するためのステント (金属メッシュ製チューブ) として使用されている。これらの医療用デバイスは、周辺組織の修復後に速やかに除去されることが望ましいものもあるが、そのためには再手術が必要であり、患者にとって大きな負担となっていた。
  3. 再手術を避けるためには、体内において徐々に分解してなくなる生体吸収性材料を使用することが望ましい。そのため、欧州を中心に生体必須元素であるマグネシウム合金の医療デバイスへの適用が検討され始めている。国内でも、大阪大学のグループがマグネシウム合金製ステントの開発に着手している。マグネシウム合金の医療分野における実用化を進めるためには、医療用デバイスごとに異なる最適強度の実現および体内における分解速度の制御、さらには体内吸収後の生体安全性の検証が不可欠である。
  4. 当機構では、このような医療用生体吸収性マグネシウム合金の総合的な開発に着手した。開発合金の分解性および生体安全性試験を行い、個々の治療法に応じて選択可能な生体吸収性マグネシウム合金のラインナップを作製する。既に、ごく微量の第二成分の添加と材料の微細組織の制御により、生体安全性が高く、かつ材料の強度や体内における分解速度を広範囲に調整できる合金を開発した。本材料は先行材料と比較してより広範囲な強度および生体内分解速度を実現している。
  5. このような医療用マグネシウム合金の開発は、再手術による患者の負担軽減や医療費の削減に貢献するだけでなく、新しい医療用デバイスや治療法の開発に寄与することが期待される。 本件は、2月15—16日の2日間にわたり東京ビッグサイトで開催予定のNIMSフォーラム2006で発表の予定であり、特許出願済みである。

「プレス試料中の図2: ステントの使用例」の画像

プレス試料中の図2: ステントの使用例


「プレス試料中の図4: 試作したステント」の画像

プレス試料中の図4: 試作したステント



お問い合わせ先

研究内容に関すること

独立行政法人物質・材料研究機構
生体材料研究センター 機能再建材料グループ
主任研究員
山本 玲子 (やまもと あきこ)

TEL: 029-860-4169
E-Mail: YAMAMOTO.Akiko=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)
独立行政法人物質・材料研究機構
エコマテリアル研究センター 軽量環境材料グループ
主幹研究員
向井 敏司 (むかい としじ)

TEL: 029-859-2486
E-Mail: MUKAI.Toshiji=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

報道担当

独立行政法人物質・材料研究機構 
広報室

〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
TEL: 029-859-2026

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