次世代の高速・大容量光情報通信に適用可能な酸化物ナノ材料

紫外線波長で巨大な磁気光学効果を示す磁性半導体ナノシートの開発

2005.12.19


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSの物質研究所 ソフト化学グループは、紫外線波長で巨大な磁気光学効果を示す磁性半導体ナノ材料の開発に世界で初めて成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 物質研究所 (所長 : 室町 英治) ソフト化学グループの長田 実 主任研究員、佐々木 高義 ディレクターらは、紫外線波長で巨大な磁気光学効果を示す磁性半導体ナノ材料の開発に世界で初めて成功した。
  2. 高度情報化社会の著しい進展につれて、短時間により多くの情報が伝送可能な、短波長の可視光や近紫外光を用いた光情報通信システムの構築が必要不可欠なものになってきている。このような社会的要請に対して、高速・大容量の光通信や光データ処理用の材料開発が急務となっており、中でも基幹素子となる光スイッチや光アイソレーターとして利用可能な、短波長の可視光や近紫外光で高い磁気光学特性を示す半導体材料の開発が待ち望まれていた。
  3. 今回、独自に開発したナノレベル (約1nm) の厚みをもつ新型酸化チタン (チタニアナノシート) をベースに、チタン格子位置にコバルト、鉄などの磁性元素を置換した磁性半導体ナノシートの多層膜を作製したところ、室温で強磁性体として機能すること、さらに基礎吸収端付近の紫外線から可視光波長領域 (波長280nmから380nm) において10,000度/cm以上という巨大な磁気光学効果を示すことを見出した。また、磁性半導体ナノシートの積層数や隣接するナノシートの種類を変化させた人工超格子を作製することで、応答波長の変調や強度増強などユニークな特性制御が可能なことも確認している。
  4. 今回開発した磁性半導体ナノシートの巨大磁気光学効果は、従来の材料の中で最も短波長で機能し、現在実用化されているガーネットを大きく凌ぐ世界最高水準の性能指数を有しており、次世代の光情報通信システムの構築に必要とされる短波長光スイッチや光アイソレーターへの応用が期待される。
  5. 本研究成果は、JST戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CRESTタイプ) の研究テーマ「光機能自己組織化ナノ構造材料の創製 (研究代表者 : 佐々木 高義) 」の一環で得られたもので、国際学術誌「Advanced Materials」(Wiley-VCH社)に受理され、近日中に掲載される。

「図1 磁性半導体チタニアナノシートとその多層膜の構造模式図」の画像

図1 磁性半導体チタニアナノシートとその多層膜の構造模式図


「図2 石英ガラス基板上にナノシートとPDDAが交互に10層積層したCo置換チタニアナノシート多層膜(Ti0.8Co0.2O2)10の紫外・可視吸収スペクトルと写真」の画像

図2 石英ガラス基板上にナノシートとPDDAが交互に10層積層したCo置換チタニアナノシート多層膜(Ti0.8Co0.2O2)10の紫外・可視吸収スペクトルと写真




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物質研究所 ソフト化学グループ
長田 実 (おさだ みのる)
TEL: 029-860-4352 (ダイヤルイン)
FAX: 029-854-9061
E-Mail: OSADA.Minoru=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)
独立行政法人物質・材料研究機構
物質研究所 ソフト化学グループ
佐々木 高義 (ささき たかよし)
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FAX: 029-854-9061
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