電子線励起による室温遠紫外線レーザ発振に成功

六方晶窒化ホウ素における遠紫外波長領域の高効率発光特性を発見

2004.05.24


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSの物質研究所 スーパーダイヤグループと超高圧グループは、原材料を注意深く精製することにより得られた六方晶窒化ホウ素において、遠紫外領域 (波長215nm) を中心とする単峰性の非常に強い発光スペクトルを見出した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 物質研究所 (所長 : 渡辺 遵) スーパーダイヤグループ (ディレクター : 神田 久生) の渡邊 賢司 主任研究員と超高圧グループ (ディレクター : 赤石 實) の谷口 尚 主席研究員らは、原材料を注意深く精製することにより得られた六方晶窒化ホウ素において、遠紫外領域 (波長215nm) を中心とする単峰性の非常に強い発光スペクトルを見出した。また、この発光線は自由励起子に由来するものであり、物質固有のものであることを光吸収スペクトルで確認し、この物質が半導体レーザなどに応用可能な直接型半導体であることを実証した。さらに、電子線による励起で、この発光線を利用して遠紫外領域 (波長215nm) で室温レーザ発振動作をさせることに成功した。これは、波長変換素子を使わずに固体レーザで直接到達できる波長のうち最も短い波長における発振例である。
  2.  コンパクトで高効率の遠紫外領域の発光素子は、環境汚染物質に対して現在研究が進んでいる光触媒による分解処理法の光源として、あるいは計測用He-Cdレーザの半導体レーザへの置換え、さらにはDVDなどの光記録デバイスの高集積化、蛍光灯の励起光源としての利用、病院や食品加工などで用いられる殺菌用水銀ランプの半導体発光素子への置換えなどによる省エネ化、無水銀化など多種多様の応用分野が期待されており、産業に及ぼす影響は計り知れない。本研究により六方晶窒化ホウ素が遠紫外領域における高効率発光材料として半導体レーザなどの発光素子に応用可能であることが明らかにされた。近い将来には、近年盛んに研究されているコンパクトな電子線源 (カーボンナノチューブやダイヤモンドなど) と組み合わせることで、比較的容易に、かつコンパクトな紫外線レーザなどの紫外線光源デバイスが実用化できることが期待される。
  3.  この研究成果は、5月24日付け英国科学誌「ネイチャー・マテリアルズ」でオンライン公開される。

「高温・高圧法で作製した高純度六方晶窒化ホウ素の写真。 紙面垂直方向がc軸であり、紙面平行方向に劈開面がある。」の画像

高温・高圧法で作製した高純度六方晶窒化ホウ素の写真。 紙面垂直方向がc軸であり、紙面平行方向に劈開面がある。



お問い合わせ先

研究内容に関すること

独立行政法人物質・材料研究機構
物質研究所 スーパーダイヤグループ
主任研究員
渡邊 賢司 (わたなべ けんじ)
TEL : 029-860-4309 (ダイヤルイン)
又は 029-860-4698 (オフィス)
E-Mail: WATANABE.Kenji=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)
物質研究所 超高圧グループ
主席研究員
谷口 尚 (たにぐち たかし)
TEL : 029-860-4413 (ダイヤルイン)
又は 029-860-4693 (オフィス)
E-Mail: TANIGUCHI.Tkashi=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

報道担当

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