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理事長の交代のお知らせ

独立行政法人物質・材料研究機構の設立以来8年間にわたり理事長を務めてまいりました岸 輝雄は、平成21年6月30日付けをもって退任し、7月1日付けで潮田 資勝が新理事長に就任しましたので、お知らせ致します。

新理事長就任挨拶

「新NIMS理事長 : 潮田 資勝」の画像

新NIMS理事長 : 潮田 資勝


私は岸前理事長ご退任の後を受けて、2009年7月に独立行政法人物質・材料研究機構 (NIMS) の理事長に就任しました。この機会を頂いて、自己紹介とともに、就任にあたってNIMSの運営について考えていることをいくつか述べたいと思います。

私の専門分野は表面物性で、分光学的手法を使って表面の物理・化学現象を調べる研究をしてきました。昨年4月にフェローとしてNIMSに着任する前は、北陸先端科学技術大学院大学の学長を務め、その間NIMSのInternational Center for Young Scientists (ICYS) のExecutive Advisorとして並木地区を時々訪問していました。

NIMSは法人化後、岸前理事長のリーダーシップのもとで大きく発展を遂げ、材料分野の発表論文数や論文引用数で世界的に高く評価される存在になりました。これは大いに誇りとすべきことです。次の段階では論文を多く書くこともさることながら、その質を上げることに注力することが重要になってきます。

機構の国際化もICYSの活動を契機として大きく前進し、国内の研究機関や大学の中では最も進んでいると高く評価されています。しかし、最終目標は本来の意味で物質・材料研究における国際的なCenter Of Excellence (COE) となることで、それにはまだ何年もかけて努力を重ねる必要があります。国際化には海外からの研究者を受け入れることも大切ですが、日本人研究者が積極的に海外の研究機関に出て行って活躍することも重要です。特に若手の研究者には海外研究の機会を増やす努力をしてほしいと思います。

NIMSは大学とは違って、物質・材料科学技術分野における国策の執行機関であることを常に自覚して研究を展開することが求められます。我が国にとって第一義的に重要なことは、エネルギー源と食料源の安定的確保です。これらの必要資源を、環境に対する負荷を最小限に抑えながら確保するにはどうすればいいのか、真剣に考えて研究の重点を決めていきたいと思っています。

NIMSで行う物質・材料研究には科学的側面と工学的側面があります。科学研究は物性の普遍的な原理を追求することであり、工学研究の最終目的は使える材料を開発することにあります。科学でも工学でも研究においては常に自分で考え、自分で実験することが大切で、私のモットーはThink-for- Yourself と Do-It-Yourselfです。研究をする上でコラボレーションも大切ですが、最終的には、研究は個人の頭と手で行うものであると思います。

私が研究者のみなさんに最も申し上げたいことは、研究は楽しんでやるべきだということです。幸い私は今まで研究を楽しんできました。しかし学長や理事長のような行政職は、周りの人々が楽しく仕事ができるようにアレンジする世話役です。私は今まで十分に研究を楽しませていただいたお返しという気持ちで理事長を務め、NIMSを研究者が楽しく研究し、自分のゴールを目指せるような職場にするよう取り組んでまいります。

前理事長退任挨拶

「前NIMS理事長 : 岸 輝雄」の画像

前NIMS理事長 : 岸 輝雄


私は2009年6月30日をもって、70歳定年ならびに理事長8年任期満了により、独立行政法人 物質・材料研究機構(NIMS)の理事長を退任いたしました。たいへん恵まれた状況でこの日を迎えることができたのは、NIMS内外の多くの方々によるご支援の賜物と心から感謝しております。

独立行政法人の使命は“常にイノベーションを意識におき、最先端の施設を整備し、大学とは異なるタイプのプロジェクトを遂行すること”であると考えてきた8年3ヶ月でした。これからの研究の方向は、環境・エネルギー・安全などの“課題解決型の材料研究”にあり、そのためには、有機・高分子材料の導入が必須である一方、ナノテクノロジーが国策として大きく取り上げられるなか、“ナノテクノロジーの推進とそれを用いた材料開発”に力を注ぎました。

研究組織・研究システムの構築で特に意を用いたのは、大学院専攻の設立、国際化、産独連携です。公的機関には若い活力が必要で、国内外の大学と連係大学院を開設できたことは喜ばしいことでした。一方で“若手国際研究拠点”の運営は、現在の“世界トップレベル研究拠点”につながり、異文化が交わる “MELTINGPOT”形成の一翼を担っています。また、国内外の産業界との連携も大幅に進み、多くの共同研究が実施され、社会に貢献できる体制が整いつつあります。

研究の成果は、マテリアルサイエンス、エンジニアリング(イノベーションともいえるが)の両面から評価されなければなりません。この二つは互いにリンクしており、基礎研究と応用研究は常に循環して進めることが肝要です。幸いNIMSは、材料科学分野におけるトムソン・ロイター社の研究論文サイテーションランキングで、独法化前の31位から世界第3位、国内では第1位に躍進しています。今後、一層の努力によって死の谷を克服し、これらの研究成果を実用化につなげていきたいと念じています。ルビコンを渡ることにより、さらに素晴らしい基礎研究の芽が生まれてきます。こうした“循環研究”の中に、材料研究の醍醐味とも言えるセレンディピティが存在するのでしょう。

NIMSにとって重要なのは、国策を含めたターゲットを厳しく見据えながら、なおかつ自由な研究環境の構築を実現していくことです。すでに動き出している“若手独立研究者”にNIMSの未来の姿を感じています。

最後に、改めてNIMS内外の関係者に謝意を表し、材料研究の中核機関としてのNIMSの発展を祈り、NIMS卒業の挨拶とさせていただきます。