高感度な金属シート増強赤外吸収センサー材料

2007.12.14


独立行政法人物質・材料研究機構
独立行政法人科学技術振興機構

MANAおよびJSTは、高感度な金属シート増強赤外吸収センサー材料の製造法の開発に成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長 : 青野 正和*) の長尾 忠昭* 若手独立研究員、ナノシステム機能センターの中山 知信* センター長、及び科学技術振興機構 (理事長 : 北澤 宏一) のドミニク エンダース研究員らは、高感度な金属シート増強赤外吸収センサー材料の製造法の開発に成功した。 (* : 科学技術振興機構 (兼任) )
  2. 表面増強赤外吸収 (Surface Enhanced Infrared Absorption: SEIRA) 効果は、触媒や電極表面での化学反応モニターや微量分析に応用され、近年、微粒子薄膜を主とした応用研究が盛んに行われている。また、表面プラズモンセンサーなどの誘電センサーや抵抗測定型のガスセンサーなどとは異なり、分子振動数を直接モニターするため、分子種の同定や状態・環境モニターに適するため注目されている。しかし、これまで、微粒子膜センサー材料の感度の最適化手法が存在せず、感度のばらつきが問題であった。
  3. 今回開発した製造法は、金属ナノ薄膜を溶液中で2次元成長させ、その成長中に赤外吸収シグナルを実時間モニターしながら、感度を最適化する方法である。これまでの真空蒸着法を用いた微粒子膜成長法などに比べて、安価・簡便・迅速であり、かつ高い感度を持った材料を再現性良く製作できる点が長所である。
  4. 開発には金を用い、数十ナノメートルの大きさを持ったナノシート状の金の微結晶をシリコン基板上に高密度に集積させた薄膜材料を製作した。通常の球状ナノ粒子による集積膜に比べて、粒子間のギャップの大きさが極めて小さくなるナノギャップとなるように調整されており、ギャップへの電場集中効果により、非常に大きな赤外吸収強度を示す。本研究では、薄膜が分断された微結晶膜から、つながった連続膜へと移り変わる寸前で膜の成長を止める方法を考案し、赤外吸収強度の最適化に成功した。この方法では水の吸収ピーク強度と形状変化とを赤外吸収分光法でモニターするため、溶液中の成長制御として広く用いることが可能である。金表面に吸着した単分子層を用いて評価した結果、球形のナノ粒子による赤外吸収強度が1 - 2%であるのに対し、開発した金属シート増強センサー材料の吸収強度は10-20%程度であり、大幅な感度増強が実現できた。本手法は、赤外分光法だけでなく、その他の分光法にも応用可能な手法である。

「図1 SEIRA感度の最適化された金ナノシート膜の走査電子顕微鏡像。」の画像

図1 SEIRA感度の最適化された金ナノシート膜の走査電子顕微鏡像。



本研究開発は独立行政法人物質・材料研究機構、国際ナノアーキテクトニクス研究拠点と科学技術振興機構、戦略的創造研究事業 ICORP型研究、ナノ量子導体アレープロジェクトとの共同研究により行われた。研究の成果は、Japanese Journal of Applied Physics 誌のExpress Letterとして12月号 (12月25日発行) に掲載されるに先立ち、12月14日にオンライン版で公開された。

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