「鋳造γ粒径の支配因子」
超鉄鋼研究センター 冶金グループ 吉田直嗣
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凝固後に形成される低炭素鋼の鋳造γ粒は粗大な柱状組織である.粗大粒は熱間延性を低下させるとともに最終 組織制御の弊害となるため,鋳造 粒の微細化は重要な課題である.急冷や析出物によるピンニングなど微細化や粒成長抑制の試みがなされている.ところが,現状では鋳造 粒径を予測する手段が確立されていないため,種々の微細化手法を定量的に比較し評価することができない.
そこで,簡易な物理モデルとして,次の鋳造 粒径予測式を提案したい.
式中のTrgは 粒が急成長を開始する温度を示す.
(二乗成長量)=(Trg以下の無次元積分成長量)×(材料定数)/(冷却速度)
本式は粒界移動律速による正常粒成長の仮定に基づいており,「 粒の二乗成長量は,冷却速度に逆比例し,無次元積分成長量に比例する」という単純な関係を示している.粒径を決定する上で重要な因子は「冷却速度」と「成長開始温度Trg 」の二つである.
本式の予測は,0.1〜40K/sの範囲で成立する.予測は,0.1%C鋼を対象とした100mm厚CCスラブ(冷却速度1K/s)および2mm厚CCストリップ(冷却速度40K/s)の実験結果とよく一致する.冷却速度を40倍にすると 粒径は約1/6まで微細化する.
また,鋼中にリンを添加するとリンのミクロ偏析が 相を残留させTrgを150K以上も低温化させる.その結果,リン添加鋼の鋳造 粒径は,板厚にかかわらず100mm厚スラブ,2mm厚ストリップのいずれも,リン無添加鋼と比べて約1/2まで微細化する.
参考文献
1) N.Yoshida, Y.Kobayashi and K.Nagai: 'Prediction of as-cast grain size for near-net-shape CC', CAMP-ISIJ, 16(2003), 1028.
2) N.Yoshida, O.Umezawa and K.Nagai: 'Analysis on refinement of columnar grain by phosphorus in continuously cast 0.1 mass% carbon steel', ISIJ int., 44(2004), No.3 掲載予定.
3) 吉田直嗣,小林能直,長井寿:「ニアネットシェイプCCにおける鋳造γ粒径の予測」, 鉄と鋼, 90(2004), No.4 掲載予定.
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