「第7回超鉄鋼ワークショップでのミレニアムセッション」 超鉄鋼研究センター 冶金グループ 花村年裕 平成15年6月25日(水)につくば国際会議場において、NIMS、超鉄鋼研究センター主催で第7回超鉄鋼ワークショップが開かれた。 前者の主旨は「物質・材料研究機構 超鉄鋼研究センターのミレニアムプロジェクトでは、リサイクル材からの超鉄鋼製造を目指した研究を進めてきている。今回のセッションでは、リサイクル鉄をベースにcar-to-carの循環型社会を目指す技術を討論することを目的とする。特にリサイクルから混入が避けられないCu等の不純物が入ってきた場合のプロセスおよび材質を主眼として、自動車部品の製造に関与する工程全般に渡って展望し、その問題点抽出と将来の環境問題対策解決に繋がるブレイクスルー技術の可能性について討論していきたい。」というものである。 また、後者の主旨は「物質・材料研究機構 超鉄鋼研究センターのミレニアムプロジェクトでは、リサイクル材からの超鉄鋼製造を目指した研究を進めてきている。今回のセッションでは、将来のリサイクル鉄の増加、鉄鉱石の低品位化を睨んだ21世紀の新製鉄プロセスを模索することを目的としている。特に、ミニミル、直接薄板鋳造等、将来の鉄鋼製造プロセスを生かしたリサイクル材、低品位鉄源の利用における問題点解決といった斬新な視点で将来の鉄鋼プロセスを展望したい。」というものである。
自動車用鍛造部品の概要と近況について紹介された。鍛造は、かつては形状を造りこみ、組織はその後の熱処理によって制御されていたが、最近では高精度鍛造部品を効率良く製造する環境を構築するべく、形と質を同時に作り込む技術へ進歩していることを詳細に紹介された。また、そのためには数値解析の利用が必要不可欠であり、V添加鍛造用非調質鋼を対象とした成功例についても紹介された。
我が国における薄板製造技術の変革について触れ、製造技術(インゴットプロセス、連続鋳造プロセス、ストリップ連続鋳造)、製品技術(材料特性、表面性状)、さらにはスクラップ鉄を念頭にした合金設計の考えについて紹介された。
上工程から見た材料開発について言及し,原料から最終製品までの一貫した取り組みの必要性を主張された。今後の薄スラブ連続鋳造やストリップ鋳造になるにつれ、鋳造断面が薄くなり、加工に制限が出てくる。その場合の組織制御は上工程で制御する必要があり、介在物を積極的に利用する必要性を紹介された。最後に、今後のナショプロの提案もなされた。
ハイドロフォーミングの歴史について触れ、利点と欠点を紹介された。未解明な領域が多く、試行錯誤の上に成り立つプロセスであるが故に、材料の特性とハイドロフォーミング性の関係はわかっていないことを紹介された。ハイドロフォーミング前には予成形などもあり,必然的に多工程となる。少しでも工程を減らす努力が必要であり,数値解析技術の助けが不可欠である。現在,材料の特性とハイドロフォーミングの関係についての研究が鉄鋼協会を中心に行われている。 研究要素討論会4.(英語)「鉄源の多様化に対応した新しい鉄創り」は以下のようであり、今後多様化する鉄源に対応したプロセス技術を展望した活発な議論がなされた。特に、不純物を多く含むリサイクル材を鉄源とした場合における薄スラブCC等のプロセスの将来展開について、また、鉄鋼プロセス技術と環境負荷との関わり合いといった観点で議論がなされた。
米国における薄スラブ連鋳による鉄スクラップからの高品質鋼板創製技術に関して講演があり、Nucor社における取り組みを中心に鋼種の発展やメッキラインの技術開発などについて紹介された。競争力の面からNucorに対して、高炉メーカーの厳しい現状にも言及された。
不純物としてCuを取り上げ、Cuに起因する熱間脆性をはじめとする種々の機械的性質に及ぼす、リン、硫黄、炭素、ホウ素などの影響について報告があった。熱間プロセス時間の短縮が熱間脆性の抑制に効果的であり、薄スラブ連鋳、ストリップキャスティング)などの有効性が示唆された。
LCAの概説から、金属生産に伴う環境負荷を示す新たな指標としてTMR(Total Material Requirement)の紹介があり、鉄鋼生産に関する原材料も含めたマテリアルフローの説明があった。また、持続的発展可能な循環型社会を目指したリサイクルの有り方について論じられ、マテリアルリースシステムの提言がなされた。
鉄スクラップ使用状況の世界、EU、ドイツにおける動向の紹介、鉄スクラップ種ごとの不純物(トランプエレメント)の観点からの特徴や問題点の指摘がなされた。また、不純物対策としてS.C.などの急冷凝固を利用した鋳造プロセスが有効であることが報告され、スクラップの混合を管理した使用や、溶解エネルギーの観点から、溶銑・溶銑や還元鉄との共用が有効であることが説明された。 以上 |