若手に研究の自由があるMANA

――MANAの環境はいかがですか

MANAは文部科学省のWPI(World Premier International Research Center Initiative)拠点なのですが、この“ワールド・プレミア”は、全然おおげさではなく、本当に世界でもトップクラスの研究拠点だと思います。海外でもこれほど研究環境が整っているところはなかなかありません。特に若手の研究者が研究する環境としては世界最強といっても過言ではないと思います。

――どういうところが若手研究者にとって世界最強の環境なのですか

設備ももちろん素晴らしいのですが、若手が“自分の”研究をすることができるという点が非常に素晴らしいです。ICYS-MANAや独立研究者は「この実験をしなさい」といったことを言われることがありません。予算も独立していて、制約がとても少ないです。
スイスのバーゼル大学で客員研究員だった私が日本に戻ってきたときは、日本で同じような研究をしている研究者も少なく、市販の実験装置がないという状況で、ほとんどゼロの状態からスタートする必要があったのですが、MANAは若い私の挑戦を支えてくれました。MANAでなければ今の研究はできなかったと思います。

――独立して、自分の研究をするのは、魅力的な反面、壁にぶち当たったりした時は困りませんか

MANAには、ローラー先生をはじめ、超一流の研究者が頻繁に出入りしていますので、研究のことだけではなく、研究者としての姿勢などについても非常に有り難いアドバイスを頂けます。実験で失敗が続くなどして気が滅入ったときでも、「あの世界的大先生でも、いろいろと苦労されているんだ」と勇気づけられ、前向きに困難に立ち向かうことができます。

――共同研究などを通じて、ローラー先生からはどのようなことを学びましたか

ローラー先生は、細かいところまで具体的な数字を積み上げていくことを大事にされる方で「なんとなく」を決して許しません。どこまでも追い詰める執念や、研究者として意識の高さを学びました。今は主にメールで連絡をとりあっていますが、ローラー先生が日本に来られたり、私がスイスに行って研究を進めることもあります。このようなローラー先生との共同研究も、MANAだからこそできるのだと思います。

若手研究者を信頼し、尊重するMANA

――研究環境で、気に入っている点はありますか

MANAにはグランドチャレンジミーティングという、泊りがけでとことんディスカッションするイベントがあります。
誰がどんな研究をしているのかを知ることで新しいアイデアに繋がることもありますが、「実際その研究はなんの役に立つんだ」とか「役に立たない研究をする意味はあるのか」「でもそれが実は大事なんじゃないのか」といった根源的なことまで、PI(Principal Investigator)も若手も対等の立場で、時間を気にすることなく話し合うんです。
研究者として、とても刺激を受けますし、信頼されている感じがします。
こういったミーティングの大切さを感じている研究者は他の組織でもいるとは思いますが、実際に企画し、実行するのがMANAの凄いところだと思います。
実はこのミーティングに参加した若手研究者たちの発案で、今度は若手だけでやってみようと企画したのですが、私たちのアイデアはMANAからオフィシャルにサポートされ、昨年11月に実現しました。

国際的に開かれているMANA

――海外での経験は研究者としてプラスになっていますか

実際のところ、研究設備や環境に関して言えば、日本に、そしてこのMANAに十分整っていますが、人やノウハウを求めて海外に行く意味はあると思います。この人は凄い、この研究室は凄いと言われているところでは、得るものは大きいと思います。また、若いうちに日本とは異なる文化の中で研究し、日本を外から眺めながら生活することは、研究者としてだけではなく、一個人としての視野を広げるよいチャンスだと思います。そういった意味で、海外での経験は大きなプラスになっていると思います。

――MANAの研究者の半数以上は外国籍ですね

スイスから戻ってきてしばらくたって、ある日ふと気が付いたんです。そういえばここは日本だったな、と。それぐらい違和感がありませんでした。
研究者もそれをサポートする職員も日常的に英語を使います。さきほどのグランドチャレンジミーティングにも、もちろん外国籍研究者も参加し、英語でディスカッションしています。このようにMANAは国際的に開かれている研究所です。

――海外の研究所のような雰囲気ですか

そうですね。あるいは、「世界中と繋がっていることを日々実感できる研究所」とも言えるかもしれません。
実際、私が設計したセンサーは、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)で試作してもらいました。このメンバーはNASAの火星探査機に搭載されたセンサーも作製していまして、文字通り世界最高峰の微細加工技術を持ったチームです。若手が主体となったこのような国際共同研究も、MANAだからこそスムーズに実現したのであり、本当に有り難く思っています。

若手のチャレンジに対して、それが実現できるようさまざまな支援がある、環境が整っている、それがMANAだと思います。やりたいことがはっきりしている若手研究者にとって、これ以上ない環境だと思います。

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