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研究活動ナノシステム分野

分野コーディネーター: 寺部 一弥

新しいナノシステムが世界を変える: 人工知能からエネルギー・環境や 診断・医療まで

ユニークな特性をもつナノ構造がさらに相互に作用し合って新しい機能を発現するさまざまなナノシステムを探索し、それらを組織的に利用する研究を進めています。具体的には、ナノスケールの物質における原子や分子の輸送や化学反応の過程、電荷やスピンの偏極や励起、超伝導現象などについての基礎研究に基づいて、それらを利用した原子スイッチ、人工シナプス、分子デバイス、新しい量子ビット、脳神経網的ネットワーク回路、次世代型デバイス、高感度で並列型の分子センサーなどの開発を行っています。さらに、ナノスケールでの新しい計測法の開発も重視しており、多探針走査プローブ顕微鏡などの開発を行っています。また、MANAの他の研究分野との異分野融合研究を重視しています。



» メンバー: ナノシステム分野


新しいナノシステムが 人工知能の研究に革新をもたらす

ナノスケールの原子・イオン移動によって動作する「原子スイッチ」は、 MANAが中心となって開発してきた日本発の独自技術です。私たちはこの原子スイッチが脳神経網のシナプスのように、入力信号に対して可塑性を示すことを発見しました。この特性を利用して、無数の原子スイッチを自己形成させたナノシステムを構築し、脳の機能を模倣する新しいデバイスの開発を進めています。現在の半導体素子に基づくフォンノイマン型演算とは全く異なるアーキテクチャーで、知能情報処理機能の創出を目指します。

原子スイッチを用いた脳型デバイスの開発


新しいナノシステムによって 超伝導体の科学に革新をもたらす

超伝導研究の未来は今やナノの世界にあります。層状の結晶構造をもつFeSeは超伝導転移温度Tcが~8Kの鉄系超伝導体として知られていますが、私たちはFeSe面をもつKFe2Se2の組織構造を制御することによって、その組織構造に応じてTcが~31Kや~44Kになることを明らかにしました。それらのナノ構造とTcの関係から、Tcの上昇のメカニズムを解明しうる可能性があります。またシリコン表面上にインジウム原子層二次元物質を創製し、巨視的な超伝導電流とジョセフソン量子渦の存在を世界で初めて明らかにしました。ナノアーキテクトニクスの概念を用いて超伝導物質をデザインし、システム化するMANAの研究活動が超伝導科学の発展を加速させます。

(左)FeSe面を持つKFe2Se2超伝導体の微細組織
(右)表面原子層超伝導体に形成したジョセフソン量子渦のSTM像


新しいナノシステムの 大きな可能性を理論的に探索する

ナノの世界では揺らぎによる不確定性が避けられず、ナノシステムによる新規機能を実現するためには新しい理論的探索が必要になります。例えば、量子状態の重ね合わせを利用して並列処理を行う量子計算は、現在使われているコンピューターの能力を遥かに凌ぐパワーをもっていますが、量子状態が壊れやすいのが弱点です。私たちはトポロジカル超伝導のマヨラナ準粒子励起に着目しています。奇数個の量子渦が含まれるトポロジカル超伝導体の縁にマヨラナ準粒子が現れ、偶数個の場合それが消えるのが特徴です。このユニークな特性を利用して、超伝導体同士を繋がる接合部分でのゲート電圧印加だけで、電気的に中性なマヨラナ準粒子を安定かつ迅速に操作できる方法を見出し、量子ビット演算に利用できることを理論的に解明しました。MANAはこの量子ナノデバイスの実現への実験研究も精力的に進めています。

局所ゲート電圧によるマヨラナ準粒子制御デバイスの模式図と計算機シミュレーション結果


新しいナノシステムを精確に観察し計測する新方法の開拓

新しいナノシステムの開拓には、ナノスケール材料個々の物性計測から、それらが組み合わされてマイクロメートル以上のサイズに構築されるナノシステムの機能計測までをカバーできる新しい計測手法が必要不可欠です。私たちは、世界に先駆けて多探針走査トンネル顕微鏡(MP-STM)、4探針原子間力顕微鏡(MP-AFM)を実現しました。この新しい装置と手法によって、ナノ構造をナノスケール分解能で確認しながら、その電気的な機能を計測し、革新的ナノシステムの開発を支えています。また、ナノプラズモニクスを応用した極微量物質の精密計測方法の開発も行っています。

多探針原子間力顕微鏡の模式図とニューロモルフィックネットワーク機能計測への応用


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