渡邉 克晃

STAMレビュー論文

 

著者名:

Katsuaki Watanabe

 

所属と連絡先(メールアドレス、住所、電話、):

Department of Earth and Planetary Science, Graduate School of Science, the University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0033 JAPAN
Tel.: +81 3 5841 4019
E-mail address: kwatanabe@eps.s.u-tokyo.ac.jp

 

タイトル:

Biological weathering, mineralization and soil formation by lichens.

 

概要:

(1) 地衣類(lichen)とは。菌類と藻類との共生生物であること、世界中に分布し、とくに植生の乏しい劣悪な環境にも生育可能であること。
(2) 地衣類による岩石風化作用。粘土層の形成、溶出による微小孔の形成について。
(3) 地衣類によるバイオミネラリゼーション(生物鉱化作用)。Fe酸/水酸化物、Ca蓚酸塩の形成について。
(4) 地衣類による土壌前駆物質の形成。粘土および風化層、微小孔、FeやCa鉱物、有機物、水分などを、合わせて保持できる地衣類-岩石接触面の特性について。
(5) 植生回復の第一段階としての地衣類作用の意義。

 

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1)研究テーマ:

地衣類-岩石接触面における生物学的風化作用およびバイオミネラリゼーションの研究

 

2)研究の概要:

 古い石造建築物の表面に、苔のようなものがパッチ状に広がっているのを目にしたことがあるでしょうか(図1)。これらは地衣類と呼ばれる、菌類と単細胞藻類とが共生した生物の一群です。菌糸が絡み合ってマット状に広がり、その菌糸マットを住処にして、光合成を行なう藍藻や緑藻が共生しています。地衣類には、図1のような岩石に密着して生育する固着性地衣類のほか、体の一部だけをくっつけながら岩石を覆う葉状地衣類、また、あたかも樹木のように岩石上に立ちあがって生育する樹状地衣類などがあります。
 このような地衣類と岩石とは、その接触面において岩石を溶かしたり、壊したり、二次的な鉱物を生成したりと、独特の相互作用を示します(図2)。その結果、粘土鉱物からなる風化層や微細な溶出孔を形成し、鉄鉱物やカルシウム蓚酸塩を沈殿させ、それらを接触面に保持します。そして地衣類の遺骸が有機物の供給源となり、そこには土壌前駆物質と言える混合物質が生成されます。
 こうした現象は、岩石との接触面積が広い固着性地衣類で特に顕著です。固着性地衣類による土壌生成作用について、そのメカニズムや接触面における元素挙動の研究をしています。

 

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図1.花崗岩表面に生育する固着性地衣類。

 

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図2.固着性地衣類と花崗岩の接触面において、固着性地衣類によって促進される黒雲母の破壊および変質(反射電子像)。

 

3)URL:

http://www-gbs.eps.s.u-tokyo.ac.jp/kogure/

 

4)名前:

渡邉克晃

 

5)所属:

東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻

 

6)メールアドレス:

kwatanabe@eps.s.u-tokyo.ac.jp

 

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