重藤暁津

有機・無機混載基板のための常圧低温接合技術の開発

重藤 暁津
shigetou.akitsu@nims.go.jp

ハイブリッド材料研究センター 機能化インターコネクショングループ

団体情報:
電子実装工学研究所(IMSI)
http://www.su.t.u-tokyo.ac.jp/~imsi/
エレクトロニクス実装学会(JIEP),
http://www.e-jisso.jp/

最新情報:
エレクトロニクス実装学会 優秀講演賞 2006 (JIEP Excellent Paper Award),エレクトロニクス実装学会 研究奨励賞 2009(JIEP Award for Encouragement of Research)

概要(日本語):
 本研究では,生体から発生する信号を読み取り,人間が解釈できるように表示するためのMEMS (micro electro mechanical systems) センサシステムを小型・軽量化・多機能化するために不可欠な,有機・無機材料が混載された基板を“より簡単な”接合技術で実現するための要素技術を開発しています.いわゆる「バイオミメティクス」とは異なる内容ですが,近将来,生体を模倣して創製された先進的な材料やデバイスを,一つの完結したエレクトロニクスシステムとして機能させるためのインテグレーション方法として活用することを目指す研究として位置づけられます.
 最近のMEMSセンサシステムは,ウェアラブル (wearable) などの概念が表すように,より薄く多機能になることが求められています.特に,RC遅延の少ない銅配線が含まれる薄型基板の3次元積層構造を,可撓性に優れるポリマー基板や生体担持性,透明性,耐薬品性能の高いガラス基板のアセンブリ (接合) により構築することができれば,Figure 1に示すようなMEMSデバイスと従来のLSIを高度に混載化した次世代のセンサシステムが短期間で実現すると考えられています.そのためには,結合メカニズムや熱的性能が全く異なる材料を,サブミクロンの精度で位置決めして一括で接合するプロセスを考案しなければなりません.ポリマー基板の耐熱性や熱膨張係数の違いを考慮すると,概ね接合プロセス温度は150℃程度まで(現在は数百℃レベル)下げられることが望まれています.また,プロセスの簡易性や有機材料の脱ガスなどの観点から,少なくても位置決めやタッチダウン動作は大気圧で実行されるべきです.
 そのためには,材料表面の化学的結合状態と物理的な形状を高度に制御し,大気圧雰囲気で必ず形成される吸着分子層を介した状態でも高い接合性を確保しなければなりません.また,電極のような金属−金属接合界面では良好な電気伝導性を得ることも必須です.したがって,本研究では,材料の清浄表面に架橋性薄膜を材料の清浄表面上に形成することを提案しました.基礎的検討として銅薄膜,ポリイミド基板,ガラス(石英)基板を例に挙げ,これらの材料を大気中の水分子が吸着して生成する化合物層を介して接合することを検討しています.この手法は,Figure 2に示すように,1) 材料表面に存在する構造の不明確な初期吸着分子皮膜を中性原子ビーム衝撃で除去し,2) 1で得られた原子論的に清浄な表面を加湿された大気圧の酸素雰囲気に露出し,3) 接触・加熱し低温での体拡散を促進して結合力と導電性を得る,というものです.今までに,ガラス清浄表面に生成するシラノール基と,銅表面上の水酸化物水和物間に生じる結合を適用して,銅とガラス材料の同種・異種接合が両方実現されています.架橋性薄膜の構造は入射する水分子数を調整することで制御可能で,接合する材料に応じて露出に用いる溶剤の種類を変更することで他の材料の組み合わせも可能になることが期待されています.

 

figure 1
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figure 2
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