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肉眼では“のっぺらぼう”に見える材料を顕微鏡で観察すると、様々なパターンを見ることができます。これらは「内部組織」と呼ばれ、材料特性に大きな影響を及ぼします。 粒子・統計熱力学グループでは、様々な計算手法を駆使してナノ〜ミクロスケールの内部組織の研究を行っています。ここではその一例として、大出によるPhase-field法を用いた研究を紹介します。 環境への配慮からEUは、電気機器への有害重金属の使用を禁止しました。これにより、はんだの「鉛フリー」化が義務付けられ、電気メーカーは代替合金としてSn-Ag-Cu系の研究を行っていました。しかし、実用化のためには様々な課題があり、その一つに、はんだ表面に樹状組織(ミクロ組織の一種)が現れて表面が荒れ、「はんだ割れ」などの欠陥を見つけ難くする、という問題がありました。 図1にはんだ表面ミクロ組織を示します。樹木のように見える部分が「樹状相」、樹間を埋めているのが共晶相と呼ばれています。割れ目は「引け巣」と呼ばれ、共晶相が少ない時によく見られる現象です。引け巣は、はんだ付けの機能を損なうことはありませんが、欠陥である「はんだ割れ」とよく似ており、選別は困難です。メーカーは試行錯誤の上、樹状相の少ない合金組成を発見しましたが、平衡熱力学では、その理由を説明できませんでした。そこで非平衡熱力学に基づくPhase-field法によって、共晶相と樹状相の比率を決める因子を検討する計算を行いました。 図2にCuの添加量と共晶率の関係を示します。○が実験値、■がPhase-field法の計算値です。Phase-field計算では実験の1点を基準とし、拡散や偏析など平衡論では取り扱わない現象を考慮して、他濃度の共晶率を求めます。計算と実験がよく一致していることから、Cuの添加量が共晶相率を決めていたことが分かりました。私たちは、この他にも様々な「ミクロ組織」の解析を行い、材料設計・開発への寄与を目指しています。 |
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