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特集
新規20プロジェクトの紹介と最近の成果
― 計算科学センター ―

先進第一原理シミュレーション
手法の開発
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計算科学センター
第一原理物性グループ
大野 隆央
宮崎 剛 木野 日織
西野 正理 奈良 純 館山 佳尚

 ナノ物質はバルク物質と異なる新規な物性・機能を示します。バルクでは触媒機能を持たない金が、ナノクラスター構造(図1)では一酸化炭素の酸化反応に対する触媒機能を示すことは顕著な例です。このように新規な物性を示すナノ物質の構造と機能の相関を解明することは、科学的にも応用的にも極めて重要な課題です。
 第一原理物性グループでは、ナノ物質を対象に、構造形態、電子状態、物性・機能の相関を解析するために、先進第一原理シミュレーション手法の開発を目指しています。第一原理計算手法は物質科学の幅広い分野に適用され、物質の物性・機能を高精度に解析・予測できることが実証されています。この第一原理計算手法を基礎にして、数万以上の多数の原子群から構成されるナノ物質に対する超大規模解析手法の開発、ナノ物質の誘電応答、電子移動、スピン伝導等の様々な物性・機能の解析手法等の開発を行います。
 ナノ物質の物性・機能には多数の原子が関与すると考えられます。金ナノクラスターの例で考えると、クラスター構造に加えて欠陥を含む酸化物表面との相互作用も重要です。このような大規模系を第一原理的に解析するために、オーダーN法と呼ばれる解析手法を開発しています。第一原理オーダーN法では、全解析系を実空間において領域分割し、各領域の計算を並列処理することで大規模計算を実現します(図1)。Si(001)表面上のGeクラスターは量子ドットを実現する系として注目されています。最近、我々は地球シミュレータを利用して、Si(001)表面Geクラスター(図2)に対する約23,000原子の第一原理シミュレーションを実現しました。表紙図上(phys.stat.sol.(b)243,989(2006)より転載)に、計算により得られた等電荷密度面を示します。Si基板(青色)の上にGe層(2原子層)があり、その上にGeクラスタ(赤色が頂点)があります。これは、第一原理計算として世界トップデータの大規模計算です。地球シミュレータや計画中の京速計算機に見るように、計算機パワーは飛躍的に増大しています。第一原理オーダーN法はナノ物質やバイオ物質を解析する強力な手法になると期待されます。

図1
図2
図1   酸化物上の金ナノクラスターを例とした、第一原理オーダーN法の概念図.
図2   Si(001)表面上のGeクラスターの原子構造:約23,000原子から構成され、茶色はSi原子、緑色はGe原子を示す.


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