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特集
新規20プロジェクトの紹介と最近の成果
― 計算科学センター ―

「ナノ機能探索に向けて」
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計算科学センター
センター長
大野 隆央

 21世紀の科学技術におけるナノ物質の重要性は、国内外において広く認識され、活発な研究開発が行われています。ナノ物質では、構造形態が電子状態と量子論的に密接に絡み合い、バルク物質では顕在化しない新規な物性・機能の発現を引き起こします。ナノ物質やバイオ物質に対する最も大きな期待は、革新的な機能を発現させ、またその機能を自在に設計・制御することであり、これがナノテクノロジーの基盤です。
 第一原理計算に代表される量子論的な計算科学手法は、物質科学の幅広い分野への適用を通して、物質の物性・機能を高精度に解析・予測できることが実証されてきました。一方、地球シミュレータや計画中の京速計算機に見られるように、現在、計算機パワーも飛躍的に増大しています。このような計算手法の発展と計算機パワーの増大を背景に、数万原子群から構成されるナノ物質の構造と機能を量子論的に解明する挑戦が現実のものとなってきました。
 計算科学センターでは、第一原理物性グループ、第一原理反応グループ、強相関モデリンググループ、粒子・統計熱力学グループの4グループ体制で、ナノ物質・材料及びナノ複合体を対象に、構造形態、電子状態、物性・機能の相関を統合的に解析するための新機能探索ナノシミュレーション手法の開発(図)を目指しています。具体的には、(1)第一原理計算手法を基礎にして、ナノ物質の誘電応答、電子移動、スピン伝導等の様々な物性・機能の解析、超大規模系の解析等の先進的な第一原理解析手法、(2)凝集・磁気特性、応答特性等のナノ領域における電子物性解析手法、(3)強相関系に現れる量子多体効果や量子輸送現象を解析する強相関モデリング手法、(4)分子動力学法等の粒子計算やPhase- field法等の統計熱力学計算等、メソスケール物質(ナノ物質の複合体等)に対するマルチスケール組織・特性解析手法の開発を行います。新機能探索ナノシミュレーション手法は、構造や形状等の物質の形態をデザインすることにより革新的な機能を有するナノ物質・材料を創成する新しいものつくりパラダイム構築の基盤となるものであり、これにより、新規な物性・機能の提案が可能になると期待されます。

現在稼働中の地球シミュレータ(1秒に40兆回の演算速度)を上回る理論性能(1秒に1京回の演算速度)をもつ京速計算機が2012年稼働予定で計画中です。

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図    新機能探索ナノシミュレーション手法の概要.


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