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特集 期待が高まる実用化研究

実用材料のナノ組織形成シミュレーション法の開発
− 実用的な材料組織制御法の確立を目指して −
計算材料科学研究センター
粒子・統計熱力学グループ
小山 敏幸

 近年、ナノ・メゾスケールにおける相変態・組織形成の、連続体モデルに基づくシミュレーション手法として、「Phase-field法」と呼ばれる方法が材料科学・工学の種々の分野に広がり始めています。
 Phase-field法は、材料の組織形態を連続体モデルに基づき表現し、発展方程式を用いて複雑な組織の時間・空間変化を解析する計算法で、計算対象は現在、材料組織学全般に及び総合的な組織形成解析シミュレーション法の1つに成長しつつあります。本研究ではPhase-field法をベースに実用材料の組織形成計算法を開発しています(表紙写真下及び図1〜5は最近の計算例)。
 材料組織形成の予測は工学的に非常に重要な課題ですが、非経験的に実用材料の複雑な組織形成を予測する夢の手法の出現は、まだまだはるか遠い将来でしょう。しかし実験データとシミュレーションを併用して、実際の組織形成を定量かつ論理的にモデル化することは現在でも不可能ではありません。特にPhase-field法では、物理的描像を明確にしつつ、ほぼ定量的に複雑な組織形態形成をモデル化できますので、これからの材料設計において強力なツールとなることが期待されています。

図1  Ni基耐熱合金におけるγ'析出相(白い粒子)の粗大化挙動. 弾性場によって析出相の形状が四角となり、かつ粒子は<100>方向に配列する.
図2  Fe-Cu合金におけるα相(bcc)の相分離、およびα-Cu(bcc)のγ相(fcc)へ変化過程. 黒い粒子がα-Cu(bcc)で、赤い部分がfcc構造.
図3  Fe-Cu-Mn-Ni 4元系におけるα相(bcc)の相分解過程. MnとNi成分は初期にCu析出相に濃化するが、Cu粒子濃度の増大に伴い界面へ偏析する.
図4  Sm-Co-Cu合金(六方晶系)における相分解過程( 白:Sm(Co、Cu)5、黒:Sm2(Co、Cu)17). スピノーダル分解によって変調構造組織が形成される.
図5  ラメラ組織の球状化過程. ラメラ構造を初期状態として拡散相分解させると、ラメラ構造は崩壊し球状化が進行する.


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