NIMS NOW


平成18年度以降のNIMSの方針

− 第2期中期計画の実行に向けて −
理事長
岸 輝雄

 平成18年4月から第2期の中期計画が始まります。第2期中期計画の方針については、これまでもいろいろな機会で述べてきましたが、今一度ここで整理してご説明させて頂きたいと思います。
まず研究の進むべき方向は、ナノテクノロジーを活用した持続社会形成のための物質・材料科学 "Nanotechnology Driven Materials Science for Sustainability" です。新たなブレークスルーの可能性を秘めたナノテクノロジーを用いた物質・材料研究に大きく重点化するとともに、安全・安心な社会基盤の構築および環境・エネルギー問題に対応した材料研究を推進することとし、第2期中期計画の重点研究開発領域を「ナノテクノロジーを活用した新物質・新材料の創成」および「社会ニーズに対応した材料の高度化」としました。図に物質から製品に至る流れの中での我々が行う6つの研究分野の位置付けを示していますが、これらの研究分野に応じて20のプロジェクト研究を行う予定にしています。
 これらの研究は、第1期中期計画期間において行ってきたものも多くありますが、第2期では、第1期で得られた成果を発展させるとともに、ターゲットをより明確にして実施することにしています。組織的には、各プロジェクトに対応した20の研究センターを設置して取り組みます。

図  第2期中期計画におけるプロジェクト研究の位置付け.

 プロジェクト研究だけでなく、萌芽研究もしっかりと行います。萌芽研究は次期のプロジェクトの芽を育むためのものであり、萌芽研究なくしてNIMSの将来もないとも言える重要な研究と位置付けています。萌芽研究は、プロジェクトに携わる研究者もプロジェクト研究の傍らで実施しますが、萌芽研究を主体とする研究者から構成される2つのラボを設置して取り組む予定です。
 データシート・データベース等の知的基盤の整備、各種施設・設備の共用も積極的に推進します。施設・設備の共用に関しては、第2期から半導体プロセスの装置を整備したナノファウンドリーを加える予定にしています。これらの取り組みについては、先端的な施策の実施、設備等の開発・維持を目指し、共用基盤部門における8つのステーションが担当します。
 次に、物質・材料研究における中核的機関としての活動についてですが、引き続き、国際連携、情報発信、産独・学独の連携を中心に取り組みます。第1期に開始したいくつかの施策、すなわち物質・材料研究に携わる世界の代表的な研究機関が一堂に会する「世界材料研究所フォーラム」の開催、物質・材料研究の動向をまとめた「物質・材料アウトルック」の発行、産独を中心とする研究者が集まり情報交換・共同研究を行う「材料研究プラットフォーム」、国際標準化活動の推進などを更に発展させ、拡充していく予定です。
 運営面での課題としては大きく2つを考えています。第1は優秀な人材の確保です。私どもが目指すところは世界最高峰のマテリアル研究所です。強い集団となるには構成する個人の力を集結することが必要ですが、それは強い個人があってこそのことです。これまでも人材の確保には努力をしてきましたが、より一層力を注ぎたいと考えています。第2は外部資金の導入です。我々の最大の収入源である運営費交付金は今後確実に減少していきます。外部の競争的資金、民間企業からの資金など研究者自らが獲ってくるという意識が今後ますます重要となってきます。公的研究機関だからと言っていつまでも安泰とは限りません。人間が必要な栄養素を得るために食物を摂取するのと同様に、これらのことはNIMSが発展を続けるために取り組むべき必要不可欠の課題です。
 幸い、第1期においては高い評価が得られていますが、今後もプロジェクト研究、それを生み出す萌芽研究、施設の整備・共用、そして最終的には技術革新(イノベーションとも云える)ということをしっかり念頭におき、NIMSの発展のために最大限の努力を行う所存です。皆様方からもご支援を頂ければ幸いです。


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