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大きさが数十nmの半導体微粒子(量子ドット)は優れた光学特性をもつことから、レーザー等への応用を目指した研究が精力的に行われています。光照射や電流注入によって、電子とホール(正に帯電した電子の抜け殻)を量子ドットの中に閉じ込めることができます。電子とホールが再結合して消滅する際に1個のフォトン(光子)が発生しますが、フォトンのエネルギーは量子ドットの大きさで制御が可能です。2つのレーザーパルスを用いて、量子ドットに1組もしくは2組の電子・ホール対が形成可能です(図1)。この現象を利用すると、未来の超高速コンピュータとして期待される量子コンピュータの基本演算素子(制御NOTゲート)が実現可能であることが理論的に示されます。 従来の研究では大きさにばらつきのある多数の量子ドットについて、光学特性の平均値を評価する手法が採られて来ました。しかし、このような手法は量子ドットの精密な設計と特性評価には不向きであり、個々の量子ドットを対象とする評価法の開発が望まれていました。 私達は顕微鏡とレーザー光源を組み合わせた測定装置を作製し、さらに圧電素子を利用した顕微鏡焦点の自動調節機構を導入して、ノイズレベルが低く信頼性の高い評価装置を開発しました。図2(左)はこの装置で測定した発光スペクトルです。数本の鋭い発光線が見られますが、それぞれが大きさの異なる量子ドットからの発光です。 発光線の幅は光学特性の重要な因子ですが、通常用いられる分光器では分解能が不足していて線幅の評価が困難です。そこでマイケルソン干渉計と呼ばれる装置を作製して、1個の量子ドットから発生するフォトンの干渉現象(フォトンが自分自身と干渉する現象)を観測し、その情報から線幅を30マイクロeVと決定しました。図2(右)は干渉計の出力で、時間差の増大に伴ってフォトンの干渉性が失われる様子を表します。実測値(赤丸)は理論値(実線)とよく一致しました。 私達は今回の研究成果を基礎にして、図1のような光学的量子計算の原理実証を進める予定です。 |
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