国際連携III
(重点領域 国際共同研究)

NIMS -国立環境工学研究所(NEERI:インド)
「多機能性光触媒の開発および実用化の探索」

物質研究所
電子セラミックスグループ

国立環境工学研究所
環境材料ユニット

羽田 肇

Nitin K. Labhsetwar


 近年の環境汚染は深刻な問題です。環境有害物質の分解や除去等に関して熱触媒や光触媒の研究開発が積極的に行われています。私達は熱触媒ではRu基酸化物を中心に、排ガス中のNOx、粒子状物質(PM)やメタン等に関する環境浄化触媒の研究に取り組んでいます。一方、光触媒ではその活性は熱触媒に比べるとまだ低く、大気中の環境有害物質は一般に非常に低濃度なので、実用化には光触媒の高活性機能ばかりでなく有害物質濃縮作用を持たせた複合機能触媒の開発が重要です。この観点から私達は研究を進めております。
 半導体の複合による窒素を含む酸化亜鉛(NWZ)の可視光触媒特性の改善:噴霧熱分解法を用いて窒素を含むZnO粉末の合成過程にWO3を添加することで、ZnOの可視光触媒機能を大きく改善しました。これらの光触媒は、図に示すように、アセトアルデヒド分解に対して高い活性を示します。また、NWZ複合光触媒の表面構造も表紙写真下で示します。中空な粒子の枠は小さい結晶子で構成されています。
 可視光応答型窒素とフッ素同時ドーピング TiO2複合光触媒(NFT)の開発:
 このNFT粉末は、窒素を含むため可視光の一部を吸収します。フッ素を含むため粒子の表面酸性が強くなり反応物への吸着力が改善します。また、球状な粒子の表面はポーラス状であり、反応物への吸着性能をさらに高めることが期待されます。図に示すように、アセトアルデヒドの光分解反応に対して可視光照射下においても市販の酸化チタン(P25)より高い活性を示しました。
 高表面積、高細孔容積を持つ活性炭アエロゲル(Activated Carbon Aerogel: ACA)と光触媒の複合化による高機能性複合触媒の合成:
 ACAは、低濃度環境汚染物質(例えば、クロロエチレン)を濃縮し、一時的に細孔内に貯蔵できます。細孔の入り口付近に吸着した有害物質が光触媒で分解することに伴い、細孔内に取り込まれた有害物質は徐々に細孔の入り口付近に拡散して、最終的に、全ての有害物質が除去されます。
 以上に紹介した新規複合機能触媒はシックハウス対策を目的とした空気清浄機等への応用が強く期待できます。

図 青色光照射下におけるNWZおよびNFT光触媒によるアセトアルデヒド分解に伴うCO2発生.


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