国際連携III
(重点領域 国際共同研究)

NIMS -慶北大学生体材料研究所(韓国)
「水溶液中でのチタン表面処理技術の開発」

生体材料研究センター
機能再建材料グループ

 

慶北大学
生体材料研究所

塙 隆夫

  廣本 祥子  

金 教漢


 金属系生体材料では、耐食性、耐摩耗性、硬組織適合性(骨が材料表面に迅速に形成する性質)、また人工歯根では抗菌性を改善するために表面処理が行われます。最近では、金属材料を循環器系デバイスに使用するために、抗血栓性を付与するための表面処理法も研究されています。このうち硬組織適合性向上を目指す場合には、Ti表面へのハイドロキシアパタイト(HA)のプラズマ溶射による被覆が主流となっています。しかし、この方法は、HAの被膜自体の強度が小さい、HAとTiの界面の結合強度が小さいという問題を抱えています。そのため、電気化学的方法や水熱処理方法などの水溶液中での表面処理が必要となります(図1)。また、骨と材料界面の結合強度は材料表面の形態に影響を受けます。骨の材料表面への接合は、HA 膜厚が50-400μmのときに最も早く効果的であることが知られています。
 本研究では、電気化学的方法によって(1)表面にHAを形成させる方法(NIMS)と(2)表面に多孔体を形成させる方法(慶北大学)について検討を行いました。
 (1)では、Tiを不動態域の電位に保持すること、あるいは繰り返し電位を付加することで、表面に極めて薄いHA膜を形成することができました。この表面処理Tiを疑似体液中に浸漬すると、未処理のものと比較して迅速に表面にHAが形成しました(図2)。この疑似体液への浸漬は、実際の生体中での骨形成速度を相対的に模擬できることが明らかになっています。
 (2)では、Ca2+とPO43-を含有する溶液中で、高電圧、大電流をTiに付加することで表面にTiO2の多孔体が得られます(図3)。この表面では、骨形成を担う骨芽細胞が活性化し骨形成が促進されます。これは動物実験でも確かめられています(表紙写真上)。
 慶北大学は、これまで生体材料に関する研究を積極的に進めてきた機関であり、今後ともお互いの研究を補完できるよう連携を進めたいと考えています。本研究を基に今後は、これらの処理技術を再生医療の足場材料の開発に生かしていく予定です。

図1   Ti表面へのHA薄膜形成.酸化チタン皮膜はもとから存在する.

図2 表面処理Ti上のHA薄膜形成.

 

 

図3 Ti表面に形成されたTiO2多孔体.


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