国際連携II
(重点領域 国際共同研究)

NIMS -仁荷大学(韓国)
「プラズマを用いた酸化物ナノ粒子合成」

物質研究所
プラズマプロセスグループ

 

仁荷大学
化学工学科

石垣 隆正

  

朴 東化


 物質研究所では韓国・仁川(Incheon)にある仁荷大学(Inha University)工学部と2003年10月にMOUを締結し、「化学反応場制御先端材料プロセッシングに関する研究」を連携して進めています。仁荷大学は、1954年に工学部のみの単科大学として設立された私立大学です。仁は“仁川”の仁、荷は“荷哇伊(Hawaii)”の荷で、当時の科学技術教育に対する熱望からハワイ移民の基金によって仁川に設立されました。現在は9学部からなる総合大学で、大韓航空関連の財団によって運営されています。
 本連携では、物質研究所プラズマプロセスグループと仁荷大学化学工学科、朴東化教授の間で行っている酸化物ナノ粒子の熱プラズマ合成を対象として、その発光材料、光触媒への応用に関して、物質研究所電子セラミックスグループおよび機能性ガラスグループの協力を得て進めています。
 大気圧付近で発生させた熱プラズマは、一万K以上の高温になります。また、プラズマ流は、高温部分(電力供給部)を離れる時に105-7 K/sで急冷されます。冷却時に気相から生成した結晶核は大きな粒子に成長しないまま、ナノサイズ粒子として回収できます。熱プラズマの代表的な発生法は、高周波(RF)誘導法、直流アーク法があります。プラズマプロセスグループではRFプラズマ、仁荷大学では直流アークプラズマを用いてナノ粒子合成を行っています。ナノ粒子合成では、粒子サイズの制御とともに、組成制御、相生成が重要です。本国際連携では、二つの異なった熱プラズマ発生法の特徴をいかして、ナノ粒子合成化学反応場の制御に取り組んできました。
 光触媒として用いる酸化チタンでは、可視光領域の特性発現のため、遷移金属等のドーピングが試されています。仁荷大学では、酸化鉄や酸化ケイ素をドープした酸化チタンを気相原料のプラズマ酸化反応で合成して光触媒への応用を検討しています。
 NIMSでは、高温の熱プラズマ中に、霧状液体(ミスト)、あるいはミクロンサイズの固体粉末を供給して、ナノ粒子を合成しています。液体あるいは固体原料の熱プラズマ酸化反応により、酸化チタンナノ粒子への窒素、酸化鉄等の高濃度ドーピングが達成されました。図及び表紙写真上は、窒化チタン粉末原料から合成された高結晶性酸化チタンナノ粒子で、窒素ドープにより高い光触媒活性が期待できます。NIMSではそのほかにも、新しい発光材料である希土類元素ドープ酸化チタンナノ粒子の合成、組成制御の難しい複合酸化物のナノ粒子合成もめざしています。
 私達の研究には、仁荷大学からPh.D.を取得した呉性旻博士がポスドクとして参加しました。11月2日には、仁荷大学においてJoint Meetingを開催予定です。

図 窒化チタン粉末のプラズマ酸化反応により合成したルチル構造酸化チタンナノ粒子.


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