国際連携II
(重点領域 国際共同研究)

NIMS -カレル大学(チェコ)
「エピタキシャル極薄アルミナ膜の成長制御と評価」
― モデル触媒の担体として ―

ナノマテリアル研究所
ナノマテリアル立体配置グループ

カレル大学
電子・真空物理学科

吉武 道子

Vladimir Matolin


 アルミナ上に担持された貴金属ナノ粒子は、様々な触媒反応を示すことが知られています。メタノール製造やアンモニア合成などの化学工業用触媒から、一酸化窒素や一酸化炭素の酸化など環境浄化用触媒まで、さまざまな用途に利用されています。このような触媒の高性能化、低コスト化のための研究には、良く制御された非常に薄いアルミナ膜の上に貴金属ナノ粒子を蒸着して(モデル触媒と呼ばれる)実験が行われています(図1)。
 従来、NiAl(110)上に成長させた厚さ0.5nm(Al-Oが2層分)で2つのドメインを持つ結晶性薄膜がモデル触媒の担体として使われています。この膜は絶縁体ですがその上に金属ナノ粒子を蒸着すると絶縁体でなくなり、電子状態が実触媒と異なってしまう上に、この2ドメイン薄膜上では金属ナノ粒子の熱的安定性が低いことがわかっています。そのため、実触媒をシミュレートするモデルとして、帯電しない程度に薄く、金属ナノ粒子を蒸着しても絶縁体であり続けるエピタキシャルアルミナ膜が求められています。
 私達は、エピタキシャルアルミナ膜の成長制御に関して研究を行っており、Alを含む合金・金属間化合物を、超高真空中で、温度・酸素分圧などの条件を最適化して酸化することにより、厚さが0.5〜4nmまでの原子レベルで平坦なエピタキシャルアルミナ膜を成長させることに成功しました。図2は、Alを9原子%含むCu合金単結晶の(111)面を超高真空中、990Kで酸化してアルミナ膜を成長させた表面の、低速電子回折パターンです。このパターンから、アルミナ膜がCuAl合金に対してエピタキシャル成長していることやアルミナ膜の格子定数がわかります。
 私達のアルミナ膜は、従来膜より少し厚く金属ナノ粒子を蒸着しても絶縁体であり、かつドメインが無いためナノ粒子が熱的に安定に存在します。そのためモデル触媒の担体として有望で、触媒研究を行っているカレル大学Matolin教授の研究室と共同で、本薄膜の成長制御や放射光による評価、触媒金属ナノ粒子蒸着に関して研究を進めています。

図1 モデル触媒研究の模式図.

図2  CuAl合金上にエピタキシャル成長したアルミナ膜の低速電子回折パターンとそのモデル.

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