電子線励起室温遠紫外線レーザ発振

− 六方晶窒化ホウ素の
高効率遠紫外発光特性を発見 −

物質研究所

スーパーダイヤグループ

超高圧グループ

渡邊 賢司

谷口 尚


 近年、半導体発光素子として未踏の波長領域である遠紫外領域(200nm近辺)で発光する発光素子材料開発への要求が高まっています。窒化ホウ素の安定構造のひとつである六方晶窒化ホウ素は、その化学的安定性から絶縁材料などに使われていましたが、その性質に関してよく知られていませんでした。
 今回、私たちは原材料を注意深く精製し、高温・高圧法を用いて高純度の単結晶の成長に成功し(図1)、この物質固有の特性として高純度ダイヤモンド発光の千倍以上の強度を持つ非常に強い発光(波長215nm)を発見しました。
 さらに、六方晶窒化ホウ素の六角形面方向に割れやすい性質を利用して、表裏両面を反射面とするレーザ共振器構造を作製し電子線を入射して試料を励起したところ、この波長215nmの発光がレーザ動作に特有のいくつかの現象を起こす事を見いだし、室温レーザ発振を確認しました(図2)。
 コンパクトで高効率の遠紫外領域の発光素子が開発されると多方面の応用が考えられます。たとえば環境汚染物質に対して現在研究が進んでいる光触媒による分解処理法の光源として、あるいはDVDなどの光記録デバイスの高集積化、蛍光灯の励起光源としての利用、病院や食品加工などで用いられる殺菌用水銀ランプの半導体発光素子への置換え等のように産業に及ぼす影響は、はかりしれないものがあります。私たちのこの発見と、近年盛んに研究されているコンパクトな電子線源(カーボンナノチューブやダイヤモンドなど)を組み合わせ容易にコンパクトな紫外線レーザや紫外線光源が実用化できると期待されます。

図1   高純度六方晶窒化ホウ素単結晶.
紙面平行に結晶は割れやすい面をもつ.

図2 レーザ発振スペクトルの一例.


トップページへ