国際連携 I
(姉妹機関との共同研究)

NIMS-ケンブリッジ大学
「ダイヤモンド界面の電位分布観測」
― 光電子デバイス実用化を目指して ―

物質研究所
スーパーダイヤグループ

 

ケンブリッジ大学
材料工学科

小出 康夫

 

Colin Humphleys


 私達のグループでは実用化・工業化を目指してダイヤモンド半導体を光電子デバイスに応用する研究を展開しています。実用化を目指した半導体光電子デバイスの開発のためには、良好な金属/ダイヤモンド接合およびダイヤモンド間の異種伝導型接合が必要となります。一般に、これらの接合界面では界面を通して自然にキャリア(電子または正孔)の授受が成される結果、接合界面近傍にキャリアの枯渇した領域(空亡層と呼ぶ)およびエネルギー(電位)障壁が発生します(図1参照)。これらの電位障壁の高さや空亡層の幅は、接合界面に発生する欠陥密度に敏感に依存するため、微細加工やナノスケール積層を施した接合界面におけるその値は、真に光電子デバイスの性能や信頼性に大きな影響を与えます。
 また、ダイヤモンド半導体内のp型およびn型ドーパントは、他の半導体と比較するとその禁制帯内のエネルギー準位がかなり大きく、空亡層端における電位の分布(ダレ)が室温において数ミクロンオーダーに達することが理論的に予測されています。この現象は、ディープドーパント効果と呼ばれ、ダイヤモンド半導体の特徴でもあります。従って、金属/ダイヤモンド接合界面およびダイヤモンド異種伝導型接合界面における電位分布を計測する技術の開発、並びにその実測値は、光電子デバイス構造の設計に不可欠なものと言えます。
 本共同研究においては、ナノスケール高分解能二次電子顕微鏡を用いて接合界面を非破壊で観測すると同時に、電位分布を少なくとも0.1eVの精度において実測することを目指しています。図2には、電位分布を観測しようとしているダイヤモンド深紫外光センサーのデバイス写真を示しています。こうした基礎物性データの蓄積が、光電子デバイス開発を加速させるものと期待しています。

図1 ダイヤモンドデバイスの断面図.

図2   ダイヤモンド接合界面における電位分布を観測するための深紫外光センサーデバイス.

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