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固体清浄表面に母体とは異なる種類の原子をごく微量堆積させて適切な処理を行うことで、さまざまな種類のナノ構造を作りだすことができます。このような固体表面上のナノ構造は一般に、基板と強い相互作用をもっており、また限られた空間内に電子が閉じこめられていることに起因して、もとのバルク物質とは違う特異な特性を示すことがしばしばあります。また、このナノ構造は自己組織化的に形成されるので、原子スケールで非常に形の整った構造を容易に多量につくることができます。このような表面ナノ構造は、将来における電子・磁気デバイスの構成要素として利用されることが大いに期待されています。 私達は、この中でも特に一次元的な性質をもつ原子スケールのナノ細線構造に注目して、その電子輸送特性を実験的に解明し、さらにはナノエレクトロニクスへ展開することを目指しています。しかし、一般に表面ナノ構造は大気にさらすことにより生じる汚染や酸化に弱く、容易にその特性を失ってしまいます。そこで、私達はナノ構造の創製から電気伝導測定に不可欠である電極の取りつけ、原子スケール空間分解能での試料の観察、さらには電気伝導測定まですべてを超高真空環境下で行うことのできる装置を開発してきました(図1)。このような機能をすべて備えた装置は、世界的にみてもまれであり、当共同研究において独自に開発してきたものです。この装置を用いて、シリコン基板上のインジウム原子細線列の電気伝導とその相転移現象を世界で初めて実証することに成功しました。 現在、私達が取り組んでいる研究に、単一の希土類金属シリサイドナノ細線の電気伝導測定を行うことがあります。これまでに、金の微細電極にシリサイドナノ細線を接続させ、走査トンネル顕微鏡を用いて確認することに成功しています(図2)。特にこの系は、希土類金属原子を含むことから低温で磁気秩序を持つ可能性があり、その磁性にも興味がもたれます。また、有機分子のサイズと同程度の線幅を持つため、個々の有機分子を接続する配線網としての利用も有望です(表紙写真上)。このようなナノ金属細線の研究により、スピンエレクトロニクスおよび分子エレクトロニクスの発展にも寄与できると期待しています。 |
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