データ取得、データベース発信、国際標準化活動

腐食データシート

材料基盤情報ステーション
腐食研究グループ
田原 晃


 腐食は、材料と環境の組み合わせにより千変万化する化学現象です。炭素鋼でも海水環境と大気環境での腐食は大きく異なっています。また、同じ海水環境でも水深2〜3mの海水中と干満帯(潮の満ち引きにより海面の高さが変化する領域)とでは、干満帯での腐食量が極めて大きくなります。このように、一つの材料についても、その材料の置かれた環境により腐食現象(腐食に関与する化学反応、腐食形態、腐食速度等)は大きく異なることが知られています。
 私達が担当する腐食データシートは、このように非常に多岐にわたる腐食現象の中から、現在は低合金鋼の大気腐食現象をその対象としています。大気腐食現象の腐食速度に極めて影響の大きな因子は飛来海塩粒子であり、山間部や田園地帯と海浜部での腐食を考えたときに経験的に海浜部での腐食が厳しいことに思い当たると思います(図1および図2参照)。また、近年、幹線道路への凍結防止剤(岩塩が中心となりつつある)の散布により、これまで腐食現象があまり問題視されなかった山間部や寒冷地域での鋼橋、あるいは自動車の足回りの腐食が問題となってきています。海浜環境での耐食用低合金鋼の基礎データの取得、開発指針の確立のため、1998年に始めたFe-NiおよびFe-Cr系の二元合金を中心とする大気曝露試験がすでに5年半を経過しました。これらの鋼材については、3年が経過した時点でデータをとりまとめ、腐食データシートNo.1Aとして2002年に発行しました。現在は、No.1Aに収録できなかった試験片の外観写真、耐候性に対する合金元素の影響等を納めた資料を2005年3月の発行予定で準備を進めているところです。
 No.1A発行後、いろいろな材料および環境に対する腐食データシートの発行を希望する声が寄せられています。当面は大気腐食環境でいろいろな材料の腐食性を評価し、大気腐食に関する基礎データの拡充を図っていく予定です。寄せられた要望については前向きに検討し今後腐食データシート研究へ反映させ、皆様に使って頂ける腐食データシートの発行を目指していきたいと考えています。

図1 宮古島で2年間暴露したFe-1%Al合金の外観(図中の点線は初期試験片形状).
 

図2 飛来海塩粒子量と腐食度の関係.


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