データ取得、データベース発信、国際標準化活動

構造材料データシート
− 4つのデータシートの取り組み −

材料基盤情報ステーション
松岡 三郎


 金属材料は強いため、あらゆる機械や構造物に使用されています。しかし、機械や構造物が安全であるためには、金属材料には強さ以外の特性も必要です。そこで、私達はクリープデータシート(図の灰色)、疲労データシート(緑色)、腐食データシート(橙色)、宇宙関連材料強度データシート(水色)を作成し、発行しています。
 クリープは高温で力が作用しているときに金属が徐々に伸びる現象で、火力発電プラントのような高温機器を安全に運転するために問題となる特性です。疲労は小さな力が繰り返し作用して金属材料が壊れる現象で、自動車、橋、建物等の多くの機械や構造物で問題となる特性です。また、腐食は「鉄が錆びる」現象で、特に海辺にある高速道路や建物で問題となる特性です。宇宙関連材料はH-IIAロケットに使用されるチタン合金やニッケル基超合金を意味しており、それらの極低温における強度や疲労特性を調べ、H-IIAロケットの設計に活かしています。
 腐食と宇宙関連材料強度データシートは2002年に初版を発行しましたが、クリープと疲労データシートは40年近い歴史があり、ともに100冊前後を発行しています。
 高温機器の設計のため、クリープは20〜30年試験を続ける必要がありますが、1999年には試験時間が30年に達する試験片も出てきました。疲労においては、応力を1千万回繰り返すと、試験を中断していました。しかし、ばね等に使われる高強度鋼において、1千万回を超える応力繰り返しでも破壊する現象が見つかり、最近では100億回、3年にわたる試験が行われています。このような取り組みのため、クリープと疲労データシートは機械や構造物の設計や保守、規格や標準に使われ、高い評価を得ています。
 しかし、事故は絶えることがありません。1985年に日航ジャンボ機墜落、1995年に阪神大震災における高速道路や高層ビルの倒壊、1999年にH-IIとM-Vロケットの打ち上げ失敗、そして現在では沸騰水型原子炉の運転中止とH-IIAロケット6号機の打ち上げ失敗、大型自動車の車輪脱落事故等がマスコミでも取り上げられています。このような大事故を含め、事故による損失は国民総生産(ほぼ500兆円)の4%に当たるとの試算があります。このような厳しい現実を少しでも改善するため、私達は今までのデータシートの取り組みを粘り強く継続していきます。2002年6月には、データシートの品質を向上させるため、ISO9001の認証を取得しています。本年4月からは、データシートをより良くするための研究をスタートさせるなど、私達は新たな取り組みにも今後挑戦していきます。

図 4つのデータシート.


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