プレスリリース

金属原子移動を制御したナノスイッチにより
組み替え可能な半導体回路を実現

 NIMSは、日本電気株式会社(NEC)及び独立行政法人科学技術振興機構(JST)と共同で、固体電解質中での金属原子移動を利用したスイッチを開発するとともに、この素子を用いて回路使用効率が約10倍と高く、応用範囲の広いプログラマブルLSIの基本回路を試作し、その回路の組み替え動作を行うことに成功しました。
 回路組み替えが随時可能なプログラマブルLSIを用いると、専用のLSIチップを必要としていた複数の機能を一つのチップで行うことが可能になります。その結果、モバイル機器やデジタルテレビなどの多くの電子機器において、その性能が向上し、多機能化も容易に行えるようになります。今回開発した原子スイッチを利用することで、従来のプログラマブルLSIに較べてチップサイズで10分の1の微細化、20〜40%程度の動作速度の向上が可能になり、より応用範囲の広いプログラマブルLSIの設計が可能になりました。
 なお、今回の研究成果は、2月16日から18日まで米国カリフォルニア州サンフランシスコ市で開催された国際固体素子回路会議(ISSCC 2004)において発表されました。この研究成果の一部は、科学技術振興機構における戦略的創造研究推進事業継続研究の研究課題の研究過程により得られました。


微細接合部の界面を簡単に分離できる技術を開発
 エコマテリアル研究センターエコデバイスグループの細田奈麻絵主幹研究員らのグループは、接合部に融点の低い金属を用いることで、接合部の界面を簡単に分離できる技術を開発しました。コンピューターや携帯電話の電子基板からチップを取り外すことなどに応用でき、電子部品のリサイクルに役立つと期待されます。


高出力、広波長領域で発振可能な波長変換素子を開発
 物質研究所光学単結晶グループの北村健二ディレクターらのグループは、医療、環境計測、分光分析用光源として、より簡便に使える近・赤外領域のレーザー光波長変換素子を開発しました。開発した波長変換素子は、タンタル酸リチウム単結晶を用いた2nm角のロッド型形状で、平均出力が10W程度の高出力発振も可能です。市販の小型固体レーザー装置と組み合わせることで、広い波長領域で簡便に発振することができるため、様々な分野での応用が期待されます。


窒化ホウ素薄膜の新しい合成法を開発
 物質研究所非酸化物焼結体グループの小松正二郎主席研究員らのグループは、従来と比べて高い電界電子放出特性をもつ新型窒化ホウ素薄膜の合成に成功しました。今回の合成法では、1回の合成でミクロンオーダーの先端の尖ったエミッター形状が自己組織的に形成されるのが特徴です。デバイス作製の作業工程が従来よりも簡略化され、大幅なコストダウンにつながるため、次世代高精細大画面テレビなどの大幅な低価格化も実現可能になると期待されます。

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