新しい人工骨補填材の製品化

− 厚生労働省の医療用具製造承認を取得・販売 −

生体材料研究センター
組織再生材料グループ

生駒 俊之

菊池 正紀


 生体材料研究センターは、大阪大学(吉川秀樹教授)と共同で生体親和性に優れた高強度ハイドロキシアパタイト多孔体(図1)を開発しました。
 ハイドロキシアパタイトは人体の骨や歯の主成分と同じで、カルシウムとリン酸からできた化合物です。骨の主成分であるため、骨折部に移植すると骨と結合する性質があります。人工的には、水溶液中でカルシウムとリン酸を反応させた後、高温で焼いて作るため安全性が高い材料です。
  今回開発した骨補填剤は、図2のように、空孔が三次元に連なっているため骨を作る骨芽細胞が材料の中に入りやすく、内部に新しい骨を作るのに適しています。空孔はほぼ球状で、大きさ150〜200μmです。また、空孔をつなぐ連通孔の大きさが10μm以上ですので、材料の内部に細胞が簡単に入れる構造になっています。
 この多孔体は、高齢者の骨折などを治療するための骨補填材として臨床応用されています。骨補填剤は、骨折を早く治すために必要ですが、これまで強度が弱い点、あるいは空孔が中までつながっていないため、材料の内部では骨再生が遅いことが問題でした。しかし、今回の多孔体の壁は緻密な焼結体であるため、強度が高く、手術中や術後に壊れることはありません。以上のようないろいろのメリットがあるため治癒期間が従来の人工骨に比べて二月程度短縮されました。
 この材料は、すでに大阪大学で治験が終了し、良性骨腫瘍・骨折・炎症性関節疾患などをもつたくさんの患者に移植され、良好な骨再生が認められました。
 本材料は、昨年5月に厚生労働省の医療用具製造承認を取得し、昨年秋から東芝セラミックス(株)で製造し、(株)エム・エム・ティーより販売しています。

図1 新しく開発した人工骨。顆粒(手前)など各種形状があります。 図2 球形の気孔が互いに連なっています。この連通孔を通して細胞が中に入ります。

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