先端情報通信技術を支える物質材料研究

エコインテグレーション
−インターコネクトエコデザインとエコデバイス−

エコマテリアル研究センター
エコデバイスグループ
須賀 唯知


 環境に優しい材料とは何でしょうか?毒性のない材料、材料創成過程での環境負荷の小さい材料、リサイクル性の優れた材料、資源としての利用効率の高い材料などいろいろ考えられます。それとも、もしかすると、そもそも材料を消費しないことが本当に環境に優しいということになるのでしょうか。しかし、人間は生れながらにして人工物に取り囲まれ、材料を消費しないでは文明が成り立たない世界に生きています。
 ほとんどの人工物は、材料は単体の物質としてではなく、複合化され、組み立てられ、集積化され、システムとして組み込まれて我々の周囲の人工物を形成しています。なかでも、現代の機器は、長い人類の歴史の中で、極めて短期間のうちに生れ、育ち、そして非常に短い寿命を終えつつ、さらに大量に生産・消費されています。その環境への負荷の大きさに気づき、ようやく今、機器の設計段階からの環境対応、すなわちエコデザインの必要性が認識され始めてきました。
 そこでは、材料は単に素機能を提供するのみならず、大きさや形状などの境界条件を満たし、最大限の機能を発揮させ、しかも、機器のライフサイクルを決める重要な要素になっています。物質・材料が、その機器のライフサイクルを決め、また機器のエコデザインは物質・材料の理解から始める必要がでてきています。
 エコインテグレーションは、材料をこのような素機能を提供するものとしてのみとらえるのではなく、これを高度に集積化し、システムとしての高機能性と環境調和性を実現するための手法を総称しています(図参照)。
 私達のグループでは、その具体的な手法として、特に物質・材料間の接続・接合を対象にし、そのためのエコマテリアルや分離・解体の設計・手法を行うインターコネクトエコデザインの研究を行っています。具体的には、鉛フリー・低環境負荷の接続材料、高密度配線・高機能デバイスのためのフラーレンナノウィスカ、常温接合という固体物質の表面活性を利用した低環境負荷の集積化手法、および、接続材料の分離手法などです。
 このような、物質・材料に根差しつつ、その集積化と機器のエコデザインを目標にした手法の開拓が、新しい材料研究の方向のひとつとなることを期待しています。

図 エコ・インテグレーションの概念図


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