先端情報通信技術を支える物質材料研究

非線形光学用ガラス・結晶
−3次の非線形光学効果の利用を目指して−

材料研究所
機能基礎グループ
木村 秀夫


 レーザー光は、加工にも、情報通信にも使用されます。色々な材料を用いてレーザー光を発生することができますが、一般的なのは半導体を用いた半導体レーザー、酸化物結晶を用いた固体レーザーです。これらによりCD、DVDディスクに情報を読み書きできます。
 レーザー光は、普通の光と違って強度が強いので、固体に入射すると電子と相互作用を起こします。これが非線形光学効果です。これを利用することで光の波長を半分(2次の効果)、あるいは3分の1(3次の効果)と短くすることができます。2次の効果は、結晶でしか利用できませんが、3次の効果は結晶でもガラスのようなアモルファスでも利用できます。
 2次の効果は、主にレーザー光の波長変換に使用しますが、3次の効果では、複雑なことも可能です。たとえば、鏡に入射した光を入射した方向に反射させることが可能になります。通常は、入射した角度で反射する角度が決まります。さらには、光回路のスイッチとして用いることで、レーザー光の切り替えができるなど、3次の効果は光通信には重要な効果です。しかし、波長が短くなるため、その波長で使用する材料が十分透明でなければなりません。つまり、短い波長まで透明で、3次の非線形光学定数が大きい材料が必要となります。これまで3次の非線形光学定数は、材料の屈折率が大きいほうが大きいと考えられてきました。しかし、屈折率が大きいと、短い波長での透明性が悪くなってしまいます。また、材料を作るのも問題です。
 機能基礎グループでは、短い波長まで透明な材料ガラスに対し、大きさの異なる原子を組み合わせることで電子の変位量を増大させ、屈折率が小さくても3次の非線形光学定数を大きくすることに成功しました(図1)。また、このような材料ガラスの新しい作製方法も開発しました(図2)。現在、さらなる高性能化を目指しています。

図1 屈折率に対して大きな3次の非線形光学定数(一般的なガラスとの比較)

図2 新しい方法で作製中の材料ガラス


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