先端情報通信技術を支える物質材料研究

3次元フォトニック結晶の組立技術

材料研究所
機能融合材料グループ
宮崎 英樹


 次世代の情報通信技術を支える光学材料としてフォトニック結晶が注目されています。フォトニック結晶は、光の波長程度(数100nm〜数μm)の周期を持った2〜3次元的な構造物です。2次元的なものは半導体加工技術を利用して数多く試作されており、そう遠くない内に光集積回路に応用されるでしょう。一方、3次元フォトニック結晶は、レーザの性能を抜本的に改善できる唯一の材料として実用化が望まれていますが、今なお確立した作製手法はありません。半導体加工技術は本来平面的な構造を作る手法で、3次元構造物の作製は苦手としています。簡便な手法として微小球の自己組織化が注目されていますが、設計通りの構造物を実現することは困難です。
 私達は、走査電子顕微鏡の画面を見ながらマイクロロボットを操縦して3次元フォトニック結晶を組み立てることに挑戦しています。フォトニック結晶の部品は針の先に付着させて容易に持ち運ぶことができます。これは、物体が小さくなると重力は急激に小さくなり、静電力や分子間力のような付着力の方が優勢になるからです。
 私達が組み立てた結晶の例を表紙写真下及び図に示します。図1は球でできたダイヤモンド型フォトニック結晶です。微小球の自己組織化でできる結晶構造では、大きな発光制御機能が現れないことが知られており、球をダイヤモンド型に積層する技術が求められていました。図2は半導体技術で作った平板部品をプラモデルのように枠から切り離しては積み上げて作ったフォトニック結晶です。従来これほど多くの層を積み上げた例はありませんでした。
 私達の方法は、小規模ながらも完全に制御された高精度な3次元結晶を作り出せるので、他の手法に先駆けての試作や、構造と光学特性の関係の系統的な研究など、フォトニック結晶の基礎研究において、従来の手法を補完する特異な役割を果たしています。まだ初歩的な段階ですが、画像認識による自動組立が可能なことも実証しています。微細加工と組立の適切な役割分担が3次元フォトニック結晶の実用化の鍵となるでしょう。

図1 シリカ球のダイヤモンド型フォトニック結晶(マドリッド材料科学研究所との共同研究) 図2 半導体3次元フォトニック結晶(理化学研究所、横浜国立大学との共同研究)

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