無痛で検査できる
肝機能検査チップを開発

 現在、アルコール性肝障害や肝炎などの肝機能に関する検査は、採血から結果判明まで数時間から数週間かかります。また、採血は有資格者でなければ行うことができず、問診中に即座に検査でき、誰もが在宅で簡単に日々の健康をチェックできるデバイスの開発が求められています。
 そこで、私達はローム株式会社と共同で、無痛針を用いた採血によって在宅で肝機能を検査できるチップの開発を行っており、その基本技術を確立しました。
 血液は無痛で採血するため、図1(a)に示すように、シリコン板に高さが0.5mmの多くの針を作ります。これをバネによって皮膚に突き刺し(図1(b))、毛細血管からわずかな量(一辺が約2mmの立方体に収まる量)の血液を採取します。痛みはほとんど感じません。この血液をシリコン板に開けた無数の穴から取り出し、シリコン板に結合した極細い溝に導き、遠心分離機にかけて血球と血漿に分離します(図1(c))。この血漿を検査試薬と混合(ミキサー)し、測定流路に導入し、光を当てその濃度を検出する比色法と呼ばれる手法で分析を行います。5分程度で検査結果が得られるため、問診中に検査ができます。
 今回試作した肝機能検査チップ(表紙写真下及び図2)では、γ−GTP、GOT、GPTの3種類の肝機能検査が可能です。また、チップはペットボトルと同じプラスチック製であり、安価で使い捨て可能です。
 現在、図3のような一つのチップで採血から測定までの全作業を行うチップの完成を急いでいます。今後は、測定精度の向上や安全性の確認に取り組んだ上で、医療機器として厚生労働省の承認取得を目指します。

(a) 無痛針と貫通穴

(b)採血の様子

(b)の採血用治具先端に採血用チップ図1(c)を取り付ける.採血用チップの無痛針図1(a)により採取した血液を、シリコン板に開けた直径0.1mmの無数の貫通穴から採血用チップに導入し、血球と血漿に分離する

(c) 採血用チップ

 

図1 無痛針による採血の様子



図2 肝機能検査チップ





図3 開発中の一体型肝機能検査チップ

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