発光材料研究の新展開

耐久性に優れたサイアロン蛍光体
−白色LEDや次世代ディスプレイに最適−

物質研究所
非酸化物焼結体グループ
広崎 尚登

 

物質研究所
非酸化物焼結体グループ
解 栄軍


 白色LED(発光ダイオード)やPDP(プラズマディスプレイ)、FED(フィールドエミッションディスプレイ)などの次世代の照明や表示パネルに用いられる蛍光体は、高輝度の励起光に長時間照射されるため、高い耐久性が要求されます。
 現行の蛍光体は酸化物や硫化物のホスト結晶に希土類イオンを固溶させたものであり、結晶構造が弱いため使用中に結晶が分解して輝度が低下する問題があります。そこで、私達のグループで長年耐熱材料として研究してきたα-サイアロンをホストとすることを提案し、発光効率が高くしかも安定性に優れた蛍光体を見出しました。
 α-サイアロンは窒化ケイ素の固溶体で、
Mx(Si,Al)12(N,O)16
で示されます。ここで、Mは固溶金属で、光学活性なEuなどの希土類イオンを固溶させることにより蛍光体が実現できます。新蛍光体は従来の酸化物蛍光体と比べて下記の特長があります。
  • 優れた耐久性:ホスト結晶の熱力学的安定性が高いため劣化が少なく、効率や色彩の時間変化が小さい。
  • 可視光励起:酸化物蛍光体の多くは紫外線励起ですが、本材料では窒素導入により励起光が長波長化して可視光でも励起可能。
  • 材料設計の自由度が大きい:種々のM,N/O比を持つ物質が合成可能で、用途にあったスペクトルの調整が可能(図1)。
 新材料の用途としては、白色LEDと次世代ディスプレイが期待されています。白色LEDでは、青色LEDと黄色蛍光体の組み合わせで、補色関係にある青色と黄色の光を混ぜて白色光を得る構造で、460nmの可視光で励起される蛍光体が必要です。
 Eu-α-サイアロンは、図2に示すように450nm前後に励起のピークがあり、青色LEDで効率よく発光します。また、発光のピークは、550〜590nmの黄色であり、白色LED用蛍光体に適した発光特性を持っています。さらに、数万時間の耐久性が要求されるディスプレイ用途もこの材料の特性が活かせる分野です。

図1 材料設計による多彩な発色

図2 Eu添加α-サイアロンの励起・発光スペクトル


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