先端有機材料研究

レーザー光による加工
−有機材の分子注入と造形−

材料研究所 微小造形グループ

後藤 真宏

大石 哲雄

土佐 正弘


 私達のグループは、レーザー光を利用することで、有機分子をミクロンサイズ以下で任意の配列や形状にそれぞれ固定あるいは固化することに成功しました。
 有機材料を用いてナノ・マイクロスケールのデバイスを作製するためには、微小領域に位置選択的に有機分子を注入配置、あるいは有機材で固定造形する必要があります。しかしながら、シリコン系材料の主な微細加工技術として従来からLSI製造に用いられているリソグラフィー加工技術は、多段階工程で複雑であり、大型装置で高度な運転技術を必要とします。さらに、無機材料と異なり、高エネルギーを有するビーム注入・加工技術を用いると、有機分子は容易に分解するという問題点がありました。
 そこで、私達は可視光レーザー光を集光照射するだけというシンプルな手法によって、多様な機能を選択できる有機分子を複数種ミクロンサイズ以下の微小領域に注入配列、もしくは固定造形することが容易にできるプロセス技術を独自に開発しました。
 図1にレーザー分子固定法を模式的に示します。これは、所定の有機分子を高分子溶液に分散させ、この分散液をガラス板に被覆し、このガラス板(有機分子源膜)と、高分子膜だけを被覆した別のガラス板とを重ね合わせて、高分子膜同士をサンドイッチし、これにレーザー光を集光照射することによって、有機分子源膜中の有機分子を他方の高分子膜の微小領域に注入固定する方法です。図2に色素分子(クマリン6)
注入のミクロ配列パターンを示します。
 一方、高分子膜の代わりに色素分子を添加した光硬化性樹脂溶液にレーザーを照射することで所定形状のみを光硬化させた後、未硬化部をエタノールで除去して造形したマイクロ歯車を図3に示します。さらに、これを応用して世界で初めてガラス板上への複数種の有機分子のミクロ配列にも成功しました(表紙写真上参照)。
 このように、容易に有機分子をミクロンサイズ以下で注入・固定できる本手法は、マイクロ・ナノスケールの光学デバイスやマイクロマシンを構成するナノコンポーネントの有力な作製手法として期待されます。

図1 レーザー分子注入(固定)法の模式図


図2 有機分子注入配列パターン(像幅400μm)

図3 レーザー造形したマイクロ歯車
(直径160μmφ〜5μmφ)


トップページへ