ナノ構造解析技術の進歩

FePtナノグラニュラー薄膜の構造と磁気特性

材料研究所
ナノ組織解析グループ
高橋 有紀子


 パーソナルコンピュータの普及に伴い、インターネットによる大量の情報のやり取りがますます盛んに行われるようになっています。大容量の情報を蓄積する技術には、半導体、光、磁気等の様々なストレージ技術が用いられています。この中でも大容量、高速、安価であるということから磁気記録は情報ストレージの中核をなしています。
 限られた面積にたくさんの情報を蓄積するには、情報を蓄積する強磁性相の結晶粒サイズをナノスケールにまで微細化する必要があります。しかし、強磁性相粒子の大きさはすでにkBTで表される熱擾乱の影響を受けるほどにまで微細化しています。このため、結晶磁気異方性エネルギーの大きな規則的な構造(L10構造)を持つFePt相は、熱擾乱の影響を受けにくい次世代の磁気記録材料として注目されています。
 このように注目されているFePtですが、実用化には、記録方式に準じた配向や微粒子分散構造を実現する必要があります。
 図1及び表紙写真上には700℃に加熱したMgO単結晶基板上にFePtを10nmの厚さで作製した薄膜の電子顕微鏡像を示します。ファセット構造を持った50nm程度のFePt粒子が分散しています。また、FePt粒子は垂直磁気記録に対応したc面エピタキシャル成長しています。この薄膜の磁化を飽和させるには図2に示すように50 kOe以上の大きな磁場を必要とします。これは現在の技術では到底情報を書き込むことができない磁場です。私達はFePt粒子の上にアモルファスのAl2O3をキャッピングすることにより、異方性を大きく下げることなくナノFePt粒子を磁化させることに成功しました。
 この他にも、飽和磁化の高いFeと異方性の大きいFePtを交換結合させることにより希土類磁石を超える磁石特性を示すナノコンポジット薄膜磁石の開発も行っています。

図1 FePt島状薄膜の電子顕微鏡像

図2 FePt島状薄膜の面内及び垂直方向の磁化曲線
(a)Al2O3キャップ層なし、(b)Al2O3キャップ層あり


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