ナノ構造解析技術の進歩

Mg合金のナノ析出物の解析

材料研究所
ナノ組織解析グループ
D. H. Ping


 Mg合金は最も軽い金属材料(アルミニウムの2/3、鉄の1/4の重さ)で、自動車、航空機、携帯用通信機器などの軽量化に必須な構造材料として期待されています。
 一方、Mg合金を応用していくためにはクリープ特性や降伏応力の更なる向上が必要です。現在も新たな合金開発が進められていますが、そのためにはナノ組織の変化と強化機構を理解することは大変重要です。
 最近、私達は原子を1つ1つ捉えることのできる3次元アトムプローブ(3DAP)を、一般的なMg合金と、ナノ結晶を有するMg合金に適用し、透過型電子顕微鏡と合わせて、そのナノ析出物の構造と組成について詳細な解析を行い、Mg合金のアトムプローブ分析に世界で初めて成功しました。
 図1(a)は高強度材料であるナノ結晶Mg0.97Y0.02Zn0.01合金の高分解能電子顕微鏡像で、6層周期の積層構造をもつMg-Y-Zn 析出物を示しています。図1(b)の上部に示す原子マップは6層構造の相を含むナノ結晶粒から得られた3DAPの結果です。ここでYとZn原子は1あるいは2原子層内に偏析して、周期的な組成変動を有していることがわかります。
 Mg鋳造合金のクリープ特性を向上させるために添加される希土類元素(RE)は、ナノ析出物を形成して時効硬化を示します。例えばMg-RE-Zn-Zr 合金中では、高密度に均一分散した板状ナノ析出物が鋳造後の熱処理により形成します。その析出物は、図2(a)の高分解能電顕像に示すように、1または2原子層の厚さを持つ規則化GPゾーン(規則的な配列を持つ析出物)であることがわかりました。この明瞭なコントラストの違いは、希土類原子とZn原子がhcp Mg母相の原子面1層へ偏析したことによるもので、これは、3DAPの原子マッピングの結果(図2(b))から明らかになりました。
 合金開発では、力学特性とナノ組織が密接に関係しており、3DAP解析法は、ナノ析出物の定量的な解析に大きく貢献すると期待されます。

図1 (a) 6層構造の相の高分解能電顕像 
(b) 3DAP 解析結果(原子マップ、組成プロファイル)

図2 (a) 規則化GPゾーンの高分解能電顕像 
(b) 原子マップ 


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