任意形状の光導波路用の新しい光学材料

東北大学大学院
工学系研究科
宮嵜 博司

材料研究所
機能融合材料グループ
長谷 正司


 微小光導波路や高性能発光デバイスの実現をもたらす光学材料として、フォトニック結晶が注目されています。フォトニック結晶とは、屈折率に光の波長程度の周期性を持たせた光学材料で、例えば、円柱を正方格子の格子点上に面に垂直に並べることで作製します。ある波長域の光が透過できないという状況が実現可能で、その波長域をフォトニックギャップと呼びます。
 上記の微小光導波路は、柱の1部を取り除いて作製します。従って、任意形状の光導波路の作製は不可能で、それは光集積回路の実現においての障害となります。
 一方、私達が最近発見し、uniformly distributed photonic scatterers (UDPS)と名づけた光学材料は、フォトニックギャップを持ち、任意形状の光導波路や空洞共振器(光強度の増強が可能で発光デバイスの高性能化をもたらす)の作製が可能となり、応用上重要なため今回報告します。
 UDPSは柱間距離がある値(Dmin)以上であるという条件だけを設けて、円柱をランダムに配置したものです。円柱の屈折率と体積分率がある程度以上大きければ、フォトニックギャップが現れます。UDPSは現実の作製においても大きな利点を持ちます。フォトニック結晶は半導体微細加工技術などを用いて作製しますが、問題となるのは、円柱の位置ずれと半径ゆらぎです。これらはフォトニック結晶の性能低下につながります。一方、UDPSでは、その構造から明らかなように位置ずれの影響はありません。また、半径のゆらぎにも強いことを私達は確認しています。
 光導波路の作製では、最初に導波路部分の形状を決めて、その側面に円柱を一定間隔で並べます。これにより側面部分での不要な光散乱を防ぎます。そして外側の部分をUDPSで埋めます。図(a)は90度曲げ、(c)はS字型(2つの1/4円を組み合わせたもの)の光導波路です。光エネルギーの流れ(白矢印)と電界強度分布(赤や黄の部分が強い)の計算結果から、光は導波路の部分のみを通り、周りのUDPSにはフォトニックギャップの存在のため光が侵入していないことが分かります。また、(b)と(d)はそれぞれ(a)と(c)のLで示した線上での光透過率の計算結果です。灰色で示した波長域はフォトニックギャップで本来は光透過率が0ですが、光導波路内では大きな透過率を持っていることが分かります。
 今後の課題は、フォトニックギャップ発現機構の解明、実験による検証などです。

図 UDPSを用いた光導波路とその透過率.
主な条件は、D
min=4a(aは柱の半径)、柱の屈折率3.46、
体積分率13.8%、±20%の範囲で半径ゆらぎを導入、
Ω=2πa/λ(λは波長)


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