ニッケル基単結晶耐熱合金の
TMF性質の評価

材料研究所 超耐熱材料グループ

呂 芳一

周 浩

原田 広史


 新世紀耐熱材料プロジェクト*ではガスタービンの動静翼用のニッケル基耐熱合金を初めとする各種耐熱材料を開発中です。この度、ニッケル基単結晶耐熱合金(以下単結晶合金という)のTMF(Thermo-Mechanical Fatigue)性質の評価を開始しましたので紹介します。
 TMFとは、温度及と歪が組み合わされて同時に変化するときに生じる疲労で、一般に破断までの繰返数で評価します。油圧サーボ式疲労試験機(容量±5トン)を用いて、単結晶合金の平滑丸棒試験片によりTMF性質を求めています。試験部には温度サイクルが高周波加熱にて、歪サイクルがアクチュエーターにて与えられます。TMF性質を評価するためには、実際の翼に発生するTMFを模擬した試験条件で行っています。
 一例として、大気中にて、温度範囲:400⇔900℃、全歪範囲:1.28%、波形:三角波、周波数:6分/サイクル、温度と歪の位相:逆位相(Out-of-Phase) 圧縮保持時間:0〜10時間で実施しています。この場合、試験部には高温側で最大圧縮歪が、また低温側で最大引張歪が発生します。ガスタービンは起動停止が比較的頻繁(数時間〜1週間単位)にあるため、翼には図1のような歪が発生します。現実の翼にはクリープと疲労が重なって作用しているため、最高温度で圧縮歪を一定時間保持することでこれを模擬しています(図2参照)。
 ニッケル基耐熱合金では保持時間有りのTMF破断繰返数は保持時間無しのTMF破断繰返数より低下しますが、その低下の程度が少ない合金の開発を目指しています。
*プロジェクトの詳細については、ホームページ(http://sakimori.nims.go.jp)をご参照下さい。

図1 運転時にタービン翼に発生する歪
停止時には逆の現象が起こる

図2 TMF試験中の試験部外観


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