NIMSフォーラム2003
〜物質・材料研究機構の最先端研究と技術移転〜

大気腐食試験に関連する装置の開発

材料研究所
腐食解析グループ

升田 博之


 必要は発明の母といいますが、超鉄鋼材料研究で大気腐食の研究を始めて7年経ち、ようやく大気腐食の本質が少しずつ見えてきました。そこで、私達が最近開発した大気腐食の研究に関連する3つの装置を紹介します。
 一つ目はポータブル表面反応測定装置(図)です。日本には塗装が施されていない鉄橋などの鋼構造物が存在します。それらの表面はさびで覆われていますが、さびの保護性については目視ではわかりません。この装置は腐食が起こると電位が卑(低くなる)に移行する原理に基づき、水滴を構造物の表面に垂らしたときの電位の挙動からさびの保護性をその場で判断する装置です。安価でありながらCPUが内蔵されているため、拡張性が高く、X-Yステージを組み合わせて電位分布計測など基礎的な研究にも使えるのが特徴です。
 二つ目は新大気腐食試験装置です。実環境では直径10μm程度の海塩粒子が金属表面に蓄積し、結露・乾燥過程が繰り返されると腐食が最も加速します。現在市販されている大気腐食試験装置は値段が1千万円以上と高価で、海水噴霧などを行っているため実環境を再現できていないという欠点があります。この装置は海塩粒子の発生量を制御しつつ結露・乾燥過程を自由に設定して行うことができる装置です。高機能でありながら試作品費用は50万円以下と安価です。
 三つ目はポータブル飛来海塩粒子量測定装置です。鉄鋼材料の腐食速度は飛来海塩粒子量に依存します。そのため鋼構造物を建築するときに予め飛来海塩粒子量がわかっていれば、鋼種や塗装の必要性などの決定に非常に役立ちます。しかし短期間で飛来海塩粒子量を測定できる装置はありませんでした。この装置は銀コートを施した水晶振動子を用い、簡易密閉容器内で湿度を変化させた時の水晶振動子の周波数変化から海塩粒子をごみと区別して測定する装置です。2、3日水晶振動子を暴露するだけで精度の良い測定ができます。

図 ポータブル表面反応測定装置


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