NIMSフォーラム2003
〜物質・材料研究機構の最先端研究と技術移転〜

多機能三次元配列ナノ構造体

物質研究所
機能性ガラスグループ

井上 悟


 アルミニウムの表面を酸化して耐久性を良くするアルマイト化技術を応用して、様々な用途への利用が期待される3次元配列ナノ構造体の研究を進めています。
 図1に基本の型となる構造体の作り方を示します。液晶ディスプレーに使われている透明で電気を通す薄い膜のついたガラス板にアルミニウムの薄い膜を付けます。次に、アルミニウムの膜を酸の水溶液中で電気分解すると、数ナノメーターから数十ナノメーターの孔がガラス面に垂直に開いて配列した酸化アルミニウムの薄膜となります。アルミニウムの膜が酸化してアルマイトになる過程に相当します。導電膜はアルミニウムの電気分解を最後まで進めるための電極の役割を果たします。酸で酸化アルミニウムを少し溶解することで穴の大きさは数百ナノメーターまで大きくできます。また、酸で孔を拡げて貫通孔にできるのが今までにない特長で、多機能と密接に関係しています。孔の大きさは電気分解時に用いる酸水溶液の種類により大きく変わります。孔の個数は、電気分解時の電圧で変化し、電圧が低いほど多くなり、1ミリ四方でおよそ1億個から1兆個にもなります。これで基本形は完成です。
 次に孔の中に物質を入れて更にいろいろな3次元ナノ構造体を作ることができます。数十ナノメーターのような小さな孔に物を入れる方法として、液体状の物質が孔の壁を伝わって濡れるように入っていく過程や、導電膜を電極として金属を電極上にメッキして積み上げていく過程を主に利用しています。メッキ法で孔にニッケル金属を入れ、その後酸化アルミニウムを酸で溶かして作ったニッケルナノ構造体の電子顕微鏡写真(表紙写真下)と、チタンを含む溶液を入れて作ったチュ−ブ状二酸化チタンナノ構造体の電子顕微鏡写真(図2)を示します。
 この方法を利用して超高密度記録ができる磁気ディスクや光通信に使われる部品、新型太陽電池、高性能触媒などの開発研究を進めています。

図1 ガラス表面へのナノ構造形成手順

図2 二酸化チタンチューブ状
ナノ構造体の電子顕微鏡写真


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