NIMSフォーラム2003
〜物質・材料研究機構の最先端研究と技術移転〜

実用材料のナノ組織形成
シミュレーション法の開発

計算材料科学研究センター
粒子・統計熱力学グループ

小山 敏幸

 

小野寺 秀博


 磁性や強度などの材料特性はナノスケールの材料組織に大きく依存するため、優れた特性の材料開発にはナノスケールでの組織制御が不可欠です。私達は、フェーズフィールド法に基づく計算機シミュレーションによりナノスケールの組織を予測・解析するシステムの開発を進めています。これは、組織の形態を濃度や規則度等の変数で表現し、その時間変化を計算して、組織形成過程を解析する新しい方法です。
 表紙写真上及び右図は、耐熱合金であるNi-Al合金のγ'析出物の形成過程(図1)、部分安定化ジルコニアであるZrO2-Y2O3系の組織形成過程(図2)、ハードディスク材料であるCo-Cr合金の製膜時の組織形成(図3)およびFePtグラニュラー組織形成およびFePt 相の規則-不規則変態過程(図4)の計算例で、いずれも実験結果を良く再現できます。本シミュレーションは、通常のパソコンでも数分で結果が得られるので、画面上で試行錯誤的に組織形成の計算機実験ができます。最適な組織を得るための化学組成や熱処理条件を効率的に決定でき、材料開発のための強力なツールとなります。
 本シミュレーションと合金状態図の熱力学データベースを組み合わせたシステムを基礎に、材料設計一般を扱うことを目的として、NIMS、産総研、東北大、九工大の研究者が結集し、本年9月12日ベンチャー企業、(株)材料設計技術研究所を設立しました。現在、NIMS及び産総研認定ベンチャー企業となるべく申請中です。

図1 Ni-Al合金の等温時効の相分解過程(白がγ'相) 図2 ZrO2-Y2O3系の等温時効の組織形成過程(正方晶の相分離で、暗い相がY高濃度相)
図3 スパッタ時におけるCo-Cr膜の組織形成過程(黄色は基板、青色はCo-Cr相を示す.青色の明るさがCo濃度に対応) 図4 FePtグラニュラー組織における相分解過程(青色はアモルファスアルミナ相、黒色はFePt不規則相、黄色はFePt規則相を示す)

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