環境問題解決に挑む物質材料研究
ナノ組織制御による燃料電池用 固体電解質の高性能化研究 |
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二酸化炭素(CO2)削減と高まるエネルギー需要に応えるために、高出力小型燃料電池の研究・開発が活発に進められており、各家庭、各小規模事業体で利用可能な自家発電用電源や次世代人型ロボット用電源などへの応用が検討されています。 こうした大きな出力を必要とする小型燃料電池開発では、500℃から700℃といった温度域で高い出力を示す燃料電池用固体電解質の研究・開発が必要不可欠です。 本研究では、700℃以下の温度で燃料電池に応用可能な固体電解質の候補として、セリア系化合物に着目しました。そして、ナノ粉末の合成とその形態制御、ナノレベルにおける微細構造の解析と導電特性に与える影響の検討などを通して、セリア系化合物の高性能化に取り組んでいます。 私達は、硝酸塩を出発原料に、炭酸アンモニウムや炭酸水素アンモニウムを沈殿剤として用いる共沈法により、粉末の形態をナノサイズにおいて、球状から柱状まで変化させることができるようになりました。 図1には、球状粒子を用いて、焼結温度を1000℃から1450℃へと変化させて作製した高密度焼結体中の粒径と導電率(直流3端子法により測定)の関係を示します。以前は、粒径が小さくなると導電率は低下すると考えられてきましたが、ナノサイズの粒径をもつ緻密な焼結体は、ミクロンサイズの緻密焼結体を超える導電率をもつのではと期待されています。 さらに、図2に示すように、ナノサイズ粒子を焼結する際、その粉末の形態が、焼結体の導電率を大きく変えることもわかってきました。透過電子顕微鏡観察などから、焼結体中に20から50個の原子単位で形成されるドメインと呼ばれる微小領域が、こうした特性発現に深くかかわりをもつこともわかってきました。そこで、このナノサイズドメインの分布やサイズの制御を通して、固体電解質の高性能化を目指しています。 |
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図1 粒径と導電率の関係 |
図2 導電率に与える焼結体粒子形態と |