環境問題解決に挑む物質材料研究

光触媒による環境浄化
― 可視光応答型光触媒開発への挑戦 ―

エコマテリアル研究センター
環境浄化材料グループ

 

エコマテリアル研究センター
環境浄化材料グループ

葉 金花

 

唐 軍旺



 光触媒は、光照射によって生じる強い酸化力で有機有害物質を分解して無害化する機能を持っています。電気などのエネルギーを使わずに大気や水の汚染を浄化できる、環境にやさしい浄化技術として大いに期待されています。実際、二酸化チタン(TiO2)光触媒の脱臭、抗菌、防汚・防曇効果などを利用した製品開発がどんどん進められています。
 しかし二酸化チタンは波長が400nmより短い紫外線領域の光照射下でのみ高活性を示します。そのため、紫外線の少ない室内では、例えばシックハウス症候群などの原因物質の分解・除去には必ずしも適していません。即ち光触媒の屋内用途に道を開く鍵は可視光応答型光触媒材料の研究開発の成否にかかっています。
 私達は結晶科学的な視点に基づく材料設計手法を行い、新しいタイプの可視光応答型光触媒の開発に取り組んできました。その結果、可視光照射下で有機物分解において高活性を示す複数の新規光触媒の開発に成功しています。
 図1にはBi系酸化物光触媒によるメチレンブルー(MB)溶液の分解脱色の経時変化を示します。TiO2 では、可視光照射によるメチレンブルーの分解速度は非常に緩慢で、自然減衰と大差がありません。新規に開発された光触媒が存在する場合には、可視光のみの照射条件においても8分という非常に短い時間で完全に酸化分解し、挿入図のように溶液がブルーから無色化(透明)することが明らかになりました。
 また、図2にはBa系新規酸化物光触媒によるタバコの煙の主成分であるアセトアルデヒドの分解データを示します。640nmまでの広い範囲の可視光照射下において、アセトアルデヒドが二酸化炭素に効率的に分解される様子がわかります。このように新規に開発された光触媒は各種の有機有害物質の分解除去触媒としても大いに期待できます。

図1 可視光照射における新規Bi系光触媒によるメチレンブルー(MB)の分解.写真(a)照射前、(b)可視光照射8分後 図2 可視光照射下における新規Ba系光触媒によるアセトアルデヒドの分解実



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