2K 冷凍機による伝導冷却
マグネットで17.3 T を達成

強磁場研究センター
低温発生技術グループ
佐藤 明男



 私達は、伝導冷却マグネットとしては世界最高の17.3 Tの磁場を発生することに成功しました。
 通常、超伝導マグネットは液体ヘリウムで冷却されますが、最近のマグネットはエポキシ樹脂などで含浸して安定性を強化したマグネットが多く、液体ヘリウムによる浸漬冷却は必ずしも必要としません。むしろ冷凍機などによる伝導冷却の方が手軽で便利です。このような冷凍機伝導冷却マグネットは、ギフォード・マクマフォン(GM)冷凍機の発展とともに急速に発達し、最近では12 Tを越えるマグネットも商用機として出始めました。これまでの伝導冷却マグネットの最高磁場は、1998年に住友重機が 4K-GM冷凍機で出した15.1 Tです。
 これ以上の磁場、特に18 Tを越える磁場は、現状の技術では2 K以下まで温度を下げて超伝導特性を向上させないことには難しいとされています。ところが、GM冷凍機は 2 Kでの冷凍能力がわずか数十ミリワットしかありません。マグネットの冷却には少なくとも1 W以上は必要です。
 私達は、伝導冷却強磁場超伝導マグネットなどへの応用を目的として2K冷凍機を開発してきました。GM方式の小型冷凍機にジュールトムソン(JT)膨張回路を組み合わせたGM-JT方式の冷凍機です(図1、図2参照)。圧力損失の小さい熱交換器を開発し、JT膨張回路を2段化するなどして最適化を図り、マグネットの冷却に必要とされている1.8 Kで1 Wクラスまで冷凍能力を高めました。
 また、これが実際に強磁場マグネットにも応用できることを実証するため小型マグネットを製作しました。マグネットは、外径が254 mm、高さ350 mm、最内径が30 mmです。3つのコイルより構成されています。外側のマグネットがNbTi線、内側の二つのマグネットがNb3Sn線で構成されています。2 Kまで冷却すると、4 K冷却の場合に比べて大きな電流が超伝導状態で流せるため、17 Tクラスのマグネットとしてはきわめて小型なものができました。
 2 K冷凍機冷却技術の開発により、今までは液体ヘリウムの補給が不可欠であったNMRマグネットあるいはその他の20 Tを越える強磁場マグネットも今後は小型冷凍機で無人運転されるようになるでしょう。また、15 T以下のマグネットも、2 K冷凍機を採用することで小型化され、ひいては低価格化が進むことが期待されます。

図1 2K冷却マグネットの内部構造(単位はmm)



図2 2K冷却マグネットの外観




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