超伝導材料研究の新展開

走査型高温超伝導SQUID磁気顕微鏡

超伝導材料研究センター
SQUIDグループ
糸崎 秀夫



 最近、磁気を利用した材料研究が活発化しています。磁気を用いると、非接触で電流を検出することが可能になり、微小な部分の磁気を正確に検出する技術が求められるようになってきました。
 今回、人の脳や心臓から発生する微弱な磁場でも検出できる高感度磁気センサー「超伝導量子干渉素子(SQUID)」を使った磁気顕微鏡を開発しました(図1)。
 SQUIDセンサーは液体窒素温度に冷却する必要があるため、真空断熱した容器内に置き、冷却しておく必要があります。一方、SQUID磁気顕微鏡の分解能を高めるには、SQUIDセンサーと観察試料を近づける必要がありました。しかし、冷却容器などにより、SQUIDセンサーと試料を近づけるには限界がありました。そこで、SQUIDセンサーと試料の間に、高透磁率の針を配置することで、微小部分の磁場をSQUIDセンサーへ導くことを可能にしました。そして、その針を試料上で走査することにより、0.1 mm 以下の領域の微細な磁気を分離して観察することができるようになりました。
 この磁気顕微鏡を用いて、磁気インクで印刷されている紙幣を観察しました。図2に示すように、千円札の磁気イメージを明瞭に観察することができました。また、表紙写真上に示すように、レーザプリンター印刷文字の磁気イメージも観察することができました。
 この磁気顕微鏡は、試料の前処理を全く施さず、室温大気中の試料を簡便に観察することにより磁気イメージを得ることができるため、磁気的性質を持つ材料の観察や、非破壊による微小混入物検査、電子部品を搭載する実装基板の非接触電流検査などへの展開が期待されています。
SQUID:Superconducting Quantum Interference Device(超伝導量子干渉素子)の略称

図1 SQUID磁気顕微鏡の外観

図2 千円札夏目漱石の目の部分を
SQUID磁気顕微鏡で観察した例




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