超伝導材料研究の新展開

MgB2線材の開発
−進む高性能化−

超伝導材料研究センター
酸化物線材グループ

松本 明善   藤井 宏樹


 2001年1月に発見された金属系超伝導体MgB2は、超伝導転移温度が高く、比較的安価なMgやBを構成元素としていることから、実用化に向けた研究が盛んに行われています。
 私達は発見当初から実用化を目指した線材の開発を行ってきました。MgB2線材の作製はパウダー・イン・チューブ法と呼ばれる金属管に粉末を詰め込む方法で行われています。作製方法は図1に示すようにex-situ法とin-situ法に分類されています。当初、MgB2線材はMgB2粉末を金属管に詰め込み、簡単な加工だけで超伝導電流を流すことができるex-situ法で行われていました。しかし、この方法では実用化レベルの十分な臨界電流密度(Jc)が得られませんでした。そこで、私達はin-situ法による線材作製を行い、現在世界最高レベルの線材特性を得るに至っています。
 In-situ法は図1の下段に示すように原料粉末にMgとBを用いて、加工後熱処理によってMgB2を生成させる方法です。熱処理によってMgB2を生成させるためにex-situ法に比べて製造コストはかかりますが、添加物を容易に導入することができるため、Jc特性を大幅に改善する可能性があります。また、原料粉末を様々に工夫することによる効果も期待できます。
 その一例として、現在最も高いJc値が得られている線材の特性を図2に紹介します。青い線の特性はex-situ線材の結果ですが、in-situ線材において、原料にMgH2を用いることにより高磁界側で一桁以上のJc特性の向上がみられました。また、この線材に数十nm程度のSiC微粉末を添加すると高磁界側での特性がさらに上昇し、23Tという高磁界においても超伝導電流が流せることを実証しました。このSiC添加線材の特性は、実用Nb-Ti線材の特性に並んでおり、MgB2線材がほぼ実用レベルに達したことを意味しています。

図1 パウダー・イン・チューブ法による
MgB2線材の作製手順

図2 各種線材の臨界電流密度(Jc)の磁場依存性




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