「若手国際研究拠点」が今夏よりスタート
―国際的な研究拠点の創出に向け融合研究を推進―



 NIMSでは、このたび文部科学省の科学技術振興調整費・戦略的研究拠点育成プログラムに提案した課題が採択されました。このプログラムは、優れた成果を生み出し新しい時代を拓く研究開発システムを実現するため、研究開発機関の組織改革を進め、国際的に魅力のある卓越した研究拠点を創出することを目的とするものです。全国の大学や独立行政法人等の研究機関が提案する多数の構想の中から、NIMSの「若手国際研究拠点」(International Center for Young Scientists, ICYS)が今年度の採択プログラムのひとつとして選ばれました。今夏から5年間の予定で取り組みます。
 NIMSが実施しようとしている「若手国際研究拠点」の特徴は次のとおりです。
  1. 若手主体:20代から30代の優秀な若手研究者により構成
  2. 国際化:外国人比率50%以上、英語の公用語化
  3. 異分野融合:異分野の研究者が集まり、議論を重ね切磋琢磨しあうことにより融合領域の研究を推進
  4. 自主独立:研究リーダーを置かない組織の中で、自律的にテーマ設定、グルーピングを実施
 NIMS発足以来、私達は組織再編や新制度導入を重ね、論文数や特許件数等のアウトプットは飛躍的に増加しています。しかし、これまでの金属・セラミックス材料での実績を発展させた研究領域だけでなく、大胆に新しい分野に踏み込んで研究のシーズを継続的に生み出し、名実ともに材料科学分野における世界の中核的な研究拠点に成長するには、もう一段の変革が必要です。
 翻って、これまで国際化や若手が活躍できる環境の重要性は繰り返し指摘されてきたにもかかわらず、これを本格的に実現した公的研究機関は日本にはまだありません。このような観点から私達は、これまでの概念にとらわれないユニークなシステムの研究拠点を構築する必要があると考えました。世界各国の創造性に富む若手研究者が一堂に会し、言葉の壁もなく自分のアイデアで自律的に研究に没頭できる環境を作ることにより、各自が最大限にその能力を発揮し、異文化・多分野の融合によって独創的な研究成果を生み出す。これが「若手国際研究拠点」の根本思想です。
 「若手国際研究拠点」は研究者30人規模の研究組織です。この小規模な研究グループで上述したような大胆なシステム改革を試行し、それを段階的にNIMS本体に移植してNIMSの改革につなげ、あるいは他の研究機関にも波及させることが期待されています。
 優秀な研究者を招聘するため、研究環境や処遇を充実させます。世界有数のNIMS設備・施設を利用して研究ができるほか、研究に専念できるように支援体制を充実させます。拠点内では英語を公用語とし、討論ばかりではなく事務手続き等も英語の使用を原則とします。指導者は置きませんが、世界トップレベルの研究者より任命した領域アドバイザーから、気軽に研究面の助言を得られるようにします。また給与水準は、NIMS常勤職員よりも高く設定します。
 この拠点において取り組む重点研究領域は次の3つです。
  1. ナノエレクトロニクス・ナノバイオの融合領域
  2. ナノ物質・新計測・計算科学の融合領域
  3. 金属・セラミックス・有機材料の融合領域
これらの融合領域から創出される研究成果は、NIMS内に蓄積された技術との融合により大きな発展が期待され、今後の社会の持続的な成長に必要不可欠なものとなると考えています。
 NIMSは「若手国際研究拠点」を来春並木地区に竣工予定のナノ/生体材料実験棟の4階と5階に設置し、戦略的な融合研究を推進する中核的な拠点と位置づけて取り組んでいく所存です。
 創造性に富み、情熱のある若き研究者の参加を歓迎します。
※ 詳細についてはホームページをご覧ください。 http://www.nims.go.jp/icys/

図1 「若手国際研究拠点」のコンセプト

図2 「若手国際研究拠点」が置かれるナノ/生体材料実験棟(2004年2月竣工予定)



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